チャーンレートとは

 2021.10.06  株式会社システムインテグレータ

チャーンレートという単語を聞いたことはあるでしょうか。近年増えているサブスクモデルのビジネスにおいて重要視される指標のひとつです。

本記事では、フロー型のビジネスに比べて売上計画や料金の設定が複雑になりがちなストック型ビジネスをより効率的に展開するために、特に把握しておきたい指標についてチャーンレートを中心にご紹介します。

チャーンレートの計算方法については以下の記事で解説しています。
関連記事:チャーンレートの計算方法

チャーンレートとは

チャーンレート(Churn Rate)とは解約率のことで顧客離脱率とも呼ばれています。近年、この言葉が大きくクローズアップされてきたのは、「モノの所有」から「サービスの利用」へビジネスのトレンドが大きく変化したことが背景にあります。

この新しいトレンドは、以前からストック型ビジネスと呼ばれていましたが、クラウド時代を迎えてSaaS(Software as a Service)やサブスクモデル(Subscription model)という形態が急激に広まって、今では非常に幅広い業界に普及しています。買い取りではなく契約期間中サービスを利用できるというモデルでは、新規契約の獲得数と並んで、既存契約の維持、すなわちチャーンレート(解約率)をいかに下げるかが最重要課題となります。

LTVとは

チャーンレートと対をなす言葉にLTV(Life Time Value)があり、こちらは顧客生涯価値と呼ばれています。この言葉が登場した背景もまた「モノの所有からサービスの利用へ」の変化にあります。

シンプルな例で説明しましょう。図1はある製品を1式300万円で販売した場合(フロー売上)と年間100万円の利用料でサービス提供した場合(ストック売上)の売上の比較です。どちらも毎年1社ずつ契約を締結できるとしています。顧客側から見るとフローの方は「所有」、ストックの方は「利用」という形態になります。

顧客A社の売上(青色)を見てください。フローの方がストックの3倍の価格なので、顧客A社に対する1年目の売上は300万円対100万円でフローの方が大きいです。しかし年間の売上を見ると、フローは1年目の300万円しか売上が立たないのに対し、ストックの方は3年目が300万円、4年で400万円と売上が逆転していきます。このようにストック型の場合は短期的な収益ではなく、その顧客から長期的に収益を上げるという観点が重要で、LTV(顧客生涯価値)というキーワードが用いられるのです。

 フローとストックの売上比較

図1:フローとストックの売上比較

フローとストックの収益比較

ストック型ビジネスにとってチャーンレートがいかに大切かを、図2の例で説明しましょう。今度は毎年10社ずつ新規契約が取れるという想定です。フローの方は毎年3,000万円の売上が立ちますね。一方、ストックの方は1年目1,000万円、2年目2,000万円というふうに増えていきます。4年間の累計売上は12,000万円対10,000万円でフローの方が大きいですが、5年でトントンとなり、その後はストックが追い越して差を開げてゆくという図式になります。

churn-rate_02

図2:フローとストックの売上比較(解約あり)

ただし、これはチャーンレートがゼロの場合で、実際には解約が発生します。仮に年間2割の顧客が離脱するとした場合は一番右のグラフのようになります(端数四捨五入)。2割離脱で累積売上をシミュレーションすると表1のようになり、なんと9年経たないとストックはフローを超えない計画となります。

フローとストックの累積売上比較

表1:フローとストックの累積売上比較

ユーザーのLTVとベンダーの累積売上のギャップ

ストックの年間契約金額をフローの1/3にしたのだから3年でフローと同じ累積売上になる。ぱっと考えるとそのように早とちりしそうですが、チャーンレート0%でも5年でトントン、20%だと9年もかかるという計算になります。これは最初にすべての会社と契約するわけでなく、毎年、新たな契約が増えてゆくからです。厳密に言えば、図2の解約率0%は5年でトントンでしたが、年初に10社契約するわけではなく毎月五月雨式に契約してゆくので、それを考慮すると5年でトントンにも届かないことになります。

一方で、お客様から見たLTVはどうでしょうか。図1で説明したようにお客様から見ればストック型契約だと3年で買い取りと同額になるので、3年以上利用するなら買い取りの方が安いという判断になります。このようにユーザーから見て何年で同額かと、ベンダーから見て何年でペイするかにはギャップがあるので、SaaSやサブスクモデルの価格設定は悩ましいのです。

2種類のチャーンレート

チャーンレートには、図3のように顧客数ベース(Customer Churn Rate)と収益ベース(Revenue Churn Rate)の2種類があります。

Customer Churn Rate(カスタマーチャーンレート)

ストック型ビジネスの立ち上げ期によく使われるのは顧客数(契約数)ベースのチャーンレートで、何アカウントが解約したか(Account Churn Rate)や何ライセンスが解約したか(Customer Churn Rate)など契約数ベースで解約率を計算します。

2種類の解約率(顧客数ベースと収益ベース)

図3:2種類の解約率(顧客数ベースと収益ベース)

単純に契約社数ベースのCustomer Churn Rateで計算するのはシンプルですし、シェアを広げてゆく段階では社数はとても重要です。ただし、実際の価格設定はもう少し複雑です。例えば図4は当社のプログラミングスキル判定サービスTOPSICの料金プランです。ご利用いただくライセンス数(人数)ごとに年間利用料が定められており、ライセンス数が多くなると一人あたりの利用料(単価)が割安になるようなテーブルです。

TOPSICの料金プラン

図4:TOPSICの料金プラン

この価格表のように、同じ1本の契約といっても人数(ライセンス数)が異なる場合、小口よりも大口の解約の方がずっとインパクトが大きくなります。そのため、社数ベースに加えてライセンス数ベースのCustomer Churn Rateも併せて計算します。ライセンス数ベースは、解約だけでなく、例えば200ユーザーから100ユーザーにダウングレードした場合もチャーンレート計算に乗っかってくるので、より正確にダメージを把握することができます。

Revenue Churn Rate

ビジネスが軌道に乗って、もう少し厳密に収益ベースでチャーンレートを抑えたい場合は、Revenue Churn Rateも併用します。この例のようにライセンス数と年間利用料が比例関係でない(ボリュームディスカウントがある)場合、収益ベースで管理した方がより正確にダメージをとらえることができるからです。

Revenue Churn Rateには、ダウングレードのみを計算するGrossとダウングレードとアップグレードの両方を加味するNetの2種類があります。当社では、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」の考えから、あくまでも負け(解約とダウングレード)をカスタマーサクセス向上の指標としてとらえるためにGrossの方をKPI指標としています。

MRRとARR

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、ストック型ビジネスで毎月得られる収益のことで、月次経常収益と呼ばれています。MRRには初期費用は含みませんので、上記TOPSICの場合、基本料金(年間)は入れないか、12等分して各月の収益に加えます。例えば、さまざまなライセンス数の契約を100社と行っていて、毎月の収益が1,000万円見込める状態であればMRR=1,000万円となります。

一方、ARR(Annual Recurring Revenue)とは、これを年単位にしたもので、年間経常収益と呼ばれています。すなわち、単純計算で示すとARR=MRR×12か月ということになります。

MRRやARRの数値は、表2のようなストック型ビジネスの収支シミュレーションに使われます。表2では年間のARRベースで計算していますが、通常はもう少していねいに下記の4つのMRRを使って月次単位でMRRを計算して収益計画を打ち出します。

2つのサービスプランを持つ場合の収支計画

表2:2つのサービスプランを持つ場合の収支計画

New MRR(新規契約)

新規顧客から得られるMRR。例えば毎月1社ずつ契約というような想定でシミュレーション計算に加えます。

Churn MRR(解約)

解約により失われるMRR。

Downgrade MRR(ダウングレード)

ライセンス数ダウンや下位ランクに変更など、ダウングレードによって失われるMRR。

Expansion MRR(アップグレード)

ライセンス数のアップや上位ランクにアップなど、アップグレードによって増加するMRR。

SaaS Quick Ratio

もう1つSaaS Quick Ratioというビジネスの勢いを示すKPIも説明しておきましょう。これは「MRR増加分/MRR減少分」で表される指標です。通常、新サービスが伸び盛りのときはこの値は高くなり4以上になります。一方、4未満の場合はチャーンレートが高いなど非効率なビジネスをやっている可能性があり、落ち目になってくると1を下回ってしまいます。

SaaS Quick Ratio (%) = (New NRR + Expansion MRR) ÷ (Churn MRR + Downgrade MRR)

サービス種類ごとのチャーンレート管理

単なる解約だけでなく、ダウングレードやアップグレードまで含めてレベニューチャーンレートを管理する場合は、サービス種類ごとに管理することになります。ここでいうサービス種類とは契約プランのことで、例えば図4のTOPSIC料金プランであればライセンス数(人数)ごとに料金が異なります。

ライセンス数ではなく、サービスのグレードによってプランが分かれるケースもよくあります。例えば表2ではシルバーとゴールドの2つの単価の異なるサービスが用意され、それぞれ個別に契約獲得数や解約率をシミュレーションしています。事業の収支計画を立てる場合は、このようにサービスプランごとに数値を管理する必要があります。

ここではゴールドの年間利用料はシルバーの1.5倍の150万円、解約率は半分の10%とし、シルバーとゴールドの契約社数は8対2として計算しています。その結果、表1より2年早まって7年目に累計売上がフローを上回る皮算用となりました(それでもまだ7年かかるのですが)。

まとめ

サブスクモデルのビジネスでフロー型のビジネスを超える収益を上げるまでには時間がかかります。そこで長期的成長を実現するためには、新規契約だけではなく解約率やダウングレードによるダメージも常に把握し、課題の早期発見・解決が可能な状態にしておかなければなりません。今回ご紹介したそれぞれの指標を、より明確な状況の把握と改善への取り組みに活用することがカギとなるでしょう。

(梅田 弘之)

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