国内IT市場は右肩上がりで成長を続ける一方、少子高齢化などの影響によりエンジニアが不足し、需要に対し供給が追いついていません。
このような状況のなか、スキルが高い優秀なエンジニアを確実に獲得するには、どのような方法で採用活動をすればよいのでしょうか。エンジニアを取り巻くIT業界の状況
近年のIT業界ではどのような動きがあるのでしょうか。エンジニア不足の背景について紹介します。
近年のIT業界の動き
IT専門調査会社 IDC Japan株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最新状況を考慮した国内ICT市場予測のアップデートを発表しました。これによると2020年の国内ICT市場(支出額ベース)は、前年比6.1%減で、27兆8,357億円と予測しています。
参考サイト:
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46283620
2020年4月3日に発表した予測値は前年比4.5%減の28兆2155億円でしたが、2020年4月7日に発令された緊急事態宣言による影響から、成長率は1.6ポイント低下となっています。
業界的にエンジニア不足
IT市場は成長を続ける一方で、IT人材・エンジニアは不足の一途をたどっています。経済産業省による「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、少子高齢化を背景に、2015年時点で約17万人のIT人材が不足しており、2030年にはエンジニアの不足は約59万人に拡大すると予測しています。
参考サイト:https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s02_00.pdf
IT業界は完全な売り手市場になっており、企業は良い人材がいればすぐにでも雇用したいと考えています。特に、ビッグデータを分析して業務改善をしたい企業では「インフラエンジニア」、顧客情報の漏えい事故防止策を強化したい企業では「サイバーセキュリティエンジニア」と、エンジニアの数が不足しているだけではなく、求められる職種の幅も広がっています。
エンジニアの採用が難航する理由
各企業ではエンジニアを採用しようと計画しながらも、その採用活動は難航しています。大手転職サイトでエンジニアの求人を検索すると、例えば次のように他の職種ではまず見かけないほど好条件な求人が多数並んでいます。
- 正社員
- 40歳で年収800万円
- 転勤なし
企業はこのような条件を提示しながらも、エンジニアを雇用できずに数ヶ月求人を掲載し続けているのが現状です。
エンジニアの採用が難航する最大の理由は、IT人材・エンジニアの絶対数が足りないことです。加えて、IT業界では、企業が優秀なエンジニアを高待遇で囲い込んでいるため、人材の流動性に欠けることや、採用する側が応募者のスキルを正しく判断できていないのも一因です。
中途採用の手法
企業がエンジニア経験者を採用しようとする場合、どのような手法があるのでしょうか。
求人掲載媒体を利用する
転職専門のWebサイトなど、求人掲載媒体に企業が広告を掲載し、広く就職希望者を募る方法があります。求人を掲載するWebサイトの利用方法には、2つのタイプがあります。1つ目が広告を掲載するときに費用がかかる「広告掲載型課金」タイプ、2つ目は採用が決定してから対価を支払う「成功報酬型課金」タイプです。
マッチングサービスを利用する
企業の代わりに人材を探してくれるマッチングサービス(エージェントサービス)を利用すれば、求める人材像に完全に一致したエンジニアを採用できる可能性が高まります。マッチングサービスには「成功報酬型」が多く、エンジニアの採用が成功した場合、エージェントは求職者の想定年収の30%から35%程度を成功報酬として受け取ります。採用コストは高額ですが、希少価値の高いスキルを持つエンジニアなどを採用したい場合は、自社で人材探しをするよりも効率的です。
リファラル採用
いわゆる「縁故採用」もエンジニア採用では有効な手法のひとつです。リファラル採用では、既存の社員から紹介を受けることで新しい人材を獲得します。社員を通してエンジニアとしての能力や性格が把握できるため、ミスマッチが発生しにくいことがメリットです。
自社に合ったエンジニアを採用するポイント
自社に最適なエンジニアを採用するためのポイントを紹介します。
採用したいエンジニア像は明確か
求人広告を掲載する前に採用したいエンジニア像を具体化します。対応できる言語などスキル面の基準を決めることも大切ですが、入社後はチームの一員としてコミュニケーションを取ることになるため、性格や考え方も含めた人物像をイメージします。
また、採用担当やマネジメント層だけでなく、チームのメンバーに採用したい理想の人材像をヒアリングすることも重要です。
求人の募集要項は魅力的か
どの企業もエンジニアを確保したいと考えており、求人広告に掲載する募集要項に魅力がないと、求職者に見てもらうことすらできません。
求職者は、求められるスキルや職務に対して報酬が釣り合っているかはもちろん、給与面以外にも福利厚生の充実やオフィス所在地なども重視して、募集要項を見ています。
また、採用基準が高すぎないことも重要です。例えば、優秀なエンジニアの離職に伴う後任探しの場合、離職するエンジニアと同じレベルのスキルを持つ求職者を探すのは至難の業です。
入社後に教育する前提で経験の浅い求職者をやる気重視で採用したり、ターゲットとする年齢層の幅を広げたりして、できるだけ多くのエンジニアに応募してもらえるように工夫します。
将来性を見込んでいるか
特に離職した社員の後任を探すための求人の場合、進行中のプロジェクトが滞らないように、現時点ですぐに後任として責務を果たせる人材かどうかに注目してしまいがちです。
一方、求職者は、既存のプロジェクトを成功させることよりも、数年、もしくはそれ以上先の未来にわたって自身が成長できる企業なのかということを重視して、仕事探しをする傾向があります。
入社後に教育を施して足りないスキルを身に付けてもらう場合、教育で伸びる人材かどうかを見極めるコツのひとつが、求職者自身が作成したプログラムのソースコードを見せてもらうことです。
GitHubやherokuなどソースコードをインターネットに公開できるサービスが浸透しています。元々、向上心があり勉強熱心な求職者であれば、実務経験が浅くてもこのようなサービス上で自身のソースコードを公開するなどの活動を行っていることが多いです。
まとめ
IT市場は成長しながらもエンジニアは不足するという、需要と供給のミスマッチが今後も解消しそうにありません。このような状況の中、優秀なエンジニアを雇用し続けるには、一度獲得したエンジニアを大切にして離職を防ぐ努力をするなど、採用活動を超えた取り組みが必要になりそうです。
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