多方面で様々な研究がされ、ここ数年で目覚ましい進歩を遂げた技術と言えばAI(人工知能)でしょう。すでに一部のスーパーコンピューターだけの話ではなく、日々使っている検索エンジンやbotなど、日常的に使用しているパソコンの作業の中でも知らないうちに恩恵を受けています。また主要なクラウドベンダーが使いやすいAIのプラットフォームを安価に提供し始め、規模を問わずAIを活用したビジネスに参入する企業が増えています。
こうしたAIの発展によってビジネスシーンではもちろん、プライベートでも様々な恩恵を受けられるようになります。その反面、「AIに仕事を奪われてしまうのではないか?」と心配している方も多いのではないでしょうか。特にエンジニアにとって、自動化しやすいプログラミングがAIに奪われるのではないか不安になることもあるでしょう。
実際にメディアでは「AIが真っ先に職を奪うのはプログラマー(AIが最初に職を奪うのはプログラマー)」といった情報も発信されています。最近では画像のみからHTMLコードを自動生成するAI(web制作の自動化が進む! 画像から自動コーディングする深層学習プログラムが公開)などが開発されています。
そこで今回はプログラミングとAIの関係についてお話します。
プログラマーはAIに職が奪われやすい?
「AIが職を奪う」という話は何もプログラマーに限った話ではありません。オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授の研究では、AIによって奪われる職業のランキング(機械に奪われそうな仕事ランキング1~50位!会計士も危ない!激変する職業と教育の現場)は次のようになっています。
1位 小売店販売員
2位 会計士
3位 一般事務員
4位 セールスマン
5位 一般秘書
6位 飲食カウンター接客係
7位 商店レジ打ち係や切符販売員
8位 箱詰め積み降ろしなどの作業員
9位 帳簿係などの金融取引記録保全員
10位 大型トラック・ローリー車の運転手
このランキングによれば最も職が奪われやすいのが小売店販売員であり、意外にも会計士が2位になっています。トップ10の中にプログラマーという職種は入っていません。このランキングを見て「なんだ、安心じゃないか」と思うかそれでも危機感を持つかは人それぞれでしょう。ですがやはり、プログラマーにはAIに職を奪われやすい要素があることも確かです。
プログラミングがAIにとってかわる?具体的な理由
理由①プログラミングは構造化しやすい
プログラミングの基本は順次処理、繰り返し、分岐しかありません。人間がソースコードを読まないことを前提にすれば、AIによる実装も難しくないでしょう。
理由②コスト削減効果が大きい
IT業界でも最も多くかかる費用は人件費です。開発プロジェクトにかかるコストのほとんどが人件費と言ってもよいでしょう。そのためAIによってプログラミング自動化に成功すれば、人件費を大きく削減することになるため、潜在的なニーズがあります。
理由③AIは休まない
人間には休息が必ず必要ですし、現在の社会的な働き方改革の流れの中で長時間仕事を続けること自体が組織にとってはリスクになりつつあります。当然プログラマー本人も健康のリスクを抱えます。それに対してAIは休みません。睡眠はもちろん1秒の休息を取らずともプログラムを生成し続けられます。
理由④法律上の問題も少ない
AI分野の研究では方法論や技術はすでに確立されているものの、法律上の観点から製品化が難しいケースもあります。たとえば自動運転車で事故が発生すると、その事故の責任はドライバーにあるのか開発会社にあるのかなどが明確にならず問題が多く発生します。しかし、たとえば人命にかかわらないようなビジネスプログラムならAIでソースコードを生成し、十分なテストを行えばそのようなリスクは小さいでしょう。リスクの小さい領域では法律上のリスクも少ないため、AIがプログラマーの職を奪うのも難しくはないのです。
以上の理由から数ある職種の中でも、プログラマーはAIに仕事が奪われやすいものと考えられているのです。
プログラミングとAIの現状と未来
2045年にはAIが人類の英知を越えるというシンギュラリティ(技術的特異点)が話題になっています。それによって様々な問題が起こるとされているわけですが、実際にSF映画のような未来が到来するかはさておき、その頃にはAIによって職業環境が大きく変わっていることは確かでしょう。今から約30年後の世界では、プログラマーという職業が完全に無くなっているかもしれません。では、プログラミングとAIの現在はどういった状況にあるでしょうか?
結論から言うと、これから数年という範囲でプログラマーの仕事が奪われるということはないでしょう。ただAIによるプログラミング自動化は着実に進歩していることも確かなので、現時点での仕事内容が変わることは予想されます。
たとえばプログラマーの仕事はソースコードを書くことではなく、AIが自動生成したソースコードを「確認する」という仕事に変わっているかもしれません。AIによるプログラムの自動生成は簡単ですが、人間がソースコードを書くようにシステム全体を俯瞰して、その都度ベストな実装方法を取るというのはまだ難しい段階です。反対に定型的なソースコードに関してはAIの得意分野なので、そうしたプログラミング領域はどんどん自動化されていくはずです。
自動生成されたソースコードを確認するという仕事では、当然確認にあたるプログラマー本人に高い技術が要求されます。AIに頼らずとも自らプログラムを書く力がなければ適切なレビューや確認はできません。つまり、単純にソースコードを書くこと自体は減るかもしれませんが、プログラミングのスキル自体は求め続けられるのです。結果として高度なスキルを持つIT人材の需要が減ることはないでしょう。
IT人材の未来
従来ならばプログラミングだけに集中していたプログラマーも、AIの進歩によって徐々にマネジメント力なども要求されるようになってきます。ソースコード生成がAIによって行われれば確認だけでなく、プロジェクトマネジメントに積極的にかかわっていかなければなりません。
皆さんはAIの現状をとらえて、将来的にプログラマーという職業がどう変化するとお考えでしょうか?AIの進歩は想像以上に加速しており、2045年を待たずともシンギュラリティは訪れるかもしれません。プログラマーという職業はなくならずとも、変化していくなかでより一層スキルを持っていること自体が重要になっていくでしょう。
AIによって変わる未来を予測し、それに向けて適切なスキル習得を行っていくこと、さらにはマネジメントの力を身につけてゆくことにより、変化の時代に求められるスキルを目指してみてはいかがでしょうか?
- カテゴリ: