近年、IT市場の拡大や少子高齢化の影響で、プログラマーをはじめとするITスキルを持った人材の不足が深刻化しています。こうした環境で、企業はどのようにIT人材の採用を行い、対策するとよいのでしょうか。
この記事では、プログラマーが人材不足に陥っている原因や、競争率の激しいプログラマー採用に有効な対策をご紹介します。さらに、採用時のミスマッチ防止や採用後の育成に使えるサービスについてもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
プログラマーをはじめとするIT人材不足が深刻化
日本はすでに、プログラマーなどIT関係のエンジニア不足に陥っています。2030年にはさらに深刻なエンジニア人材不足が発生すると言われています。
2019年3月発表のみずほ情報総研の調査によると、すべての職種に対しIT関連職種への新卒就職の割合は、2008年にピークを迎え7.0%を記録しました。しかし、その後は減少に転じ、2012年には4.6%まで落ち込んでいます。それ以降は微増傾向にあるものの、2021年には6.6%程と試算されているのです。
結果として、2018年時点のIT人材需要は120万人となりましたが、この時点ですでに約22万人の供給不足に陥っています。このような需要と供給の差は、2021年でも解消されていないため、今後も各業界でエンジニア不足が続くでしょう。
参考:IT人材需給に関する調査
特に先端IT人材の獲得競争が激化
エンジニア不足が続いている中、現在は特に「先端IT人材」の獲得競争が激しくなっています。先端IT人材は、AIやビッグデータ、IoTといった第4次産業革命に関連する先端領域に対応できる人材を指します。
さきほどのみずほ情報総研の調査では、2030年までのIT需要の伸びごとにシナリオを「低位」「中位」「高位」に分けて、需要と供給の差を試算しました。2030年のIT人材供給数の予測は、従来型IT人材が約78万人、先端IT人材は約35万人と算出されています。このとき、労働生産性の上昇率を0.7%と仮定して考えると、低位シナリオで約16万人・中位シナリオで約45万人・高位シナリオになると約79万人ものITエンジニア人材の不足が予想されるのです。
さらに、低位シナリオにおいて従来型IT人材が約22万人の供給過多となり、先端IT人材は約38万人の供給不足であると試算されています。このことから、労働生産性が大幅に上昇しない限り、先端IT人材の競争率はさらに上がり、従来型IT人材の余剰が懸念されるのです。
今後、先端IT人材の獲得競争がより一層加速していくと予想されるため、人材を確保したい企業は早めの対策が必要でしょう。
プログラマー人材が不足している原因
ここまで、IT業界の成長に対して、プログラマーなどの技術者人材が不足している現状をご紹介しました。ここからは、人材不足の原因を5つご紹介します。
IT業界の拡大
IT業界の市場は今も拡大を続けており、これは人材が不足する一因となっています。
近年、IT技術を導入する業界や事業が非常に多く、需要は高まる一方です。私たちの生活にとって、IT技術がますます欠かせない存在になっているように、IT業界そのものの拡大も社会から必要とされているのです。しかし、現状のIT業界では市場が拡大するペースに人材供給が追いついていません。そのため、IT業界のエンジニア不足が発生しているのです。
また、昨今は人工知能である「AI」や、モノとインターネットをつなげる「IoT」などの新しい分野が開拓され、市場規模はさらに広がる見込みです。メタバースやNFTなど、これからの発展が期待されるIT市場も続々と誕生しているため、依然としてこうした問題は続いていくでしょう。
IT人材の高齢化
IT人材の高齢化も人材不足の一因とされています。昨今はプログラマーなどの高齢化が進んでいることもあり、定年退職を迎えることによって、さらなる人材不足が危惧されています。
また、企業によっては独自のシステムを運用しているケースも多く、こうした社内独自の環境に精通したIT技術者の退職は軽視できません。
加えて、日本は深刻な少子化問題も抱えています。これから育つ人材が少ない反面、辞めていく人材が多いという不均衡な現状も、人材不足の状態を悪化させる要因なのです。
IT技術の進化が速い
IT技術は進化するスピードが速く、新しい技術が次々と開発されているため、先端IT人材が不足しています。
プログラマーとしての価値を高めるためには、特定の技術を身に付けるだけではなく、時代に合わせた新しいスキルを習得しなければなりません。時代と企業のニーズを満たす人材は限られるため、優れた人材の奪い合いが続いてしまうのです。
加えて、業務のほかに最新技術に関する学習も必要となるため、プログラマーの負担が増して離職につながることも人材不足の原因と言えます。
IT業界のネガティブなイメージ
IT業界と聞くとネガティブなイメージを持つ人が多いことも、人材不足の原因です。
IT業界は「新3K」と呼ばれる「きつい」「厳しい」「帰れない」というネガティブなイメージを持たれる傾向にあります。人材不足という現状も「仕事の量が多く、激務になるのでは」という不安を抱かせる原因になり、より人材不足が加速してしまう悪循環を引き起こしています。
こうしたネガティブなイメージの払拭は、IT業界の企業にいち早く求められる課題なのです。
プログラマー人材の採用は難しい?
プログラマーやIT関係のエンジニアなどの採用は、企業にとって難しいことなのでしょうか。この疑問に対するひとつの指標が「有効求人倍率」です。
有効求人倍率は、企業からの求人の数をハローワークに登録している求職者の数で割ることで算出されます。つまり、有効求人倍率が1倍を超えている状態は、求職者の数よりも求人の数の方が多い状態を意味し、多数の企業が少ない求職者を取り合っていることを表すのです。
プログラマーなどの情報技術者の有効求人倍率は、2019年12月にピークを迎え、4.7倍となりました。しかし、その後は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年4月には2.4倍まで有効求人倍率は低下しています。それ以降は微増減を繰り返しながら、3回目の緊急事態宣言が出された2021年の4月には2.1倍となりました。そこから情報技術者の求人は右肩上がりの増加に転じ、2022年3月には3.1倍まで上昇しています。
プログラマーなどの情報技術者の有効求人倍率は、全職種と比較すると飛び抜けて高い数値になっています。そのため、プログラマーやITエンジニアの採用を検討している企業は、採用に工夫を凝らす必要があるのです。
人材が不足している中で採用を失敗しないポイント
プログラマーの採用を考える際は、人材不足による採用難をどのようにして乗り越えるかを工夫する必要があります。ここでは、採用難を乗り越えるポイントを3つご紹介します。
求める人材を明確にしミスマッチを防ぐ
どのような職種においても言えることですが、人材のミスマッチを防止することが大切です。
仮に採用が上手くいったとしても、採用後前後の認識にズレがあると早期離職を招きます。まずは求める人材像を明確に打ち出し、求職者側・企業側双方のギャップを減らしましょう。
ひと口に採用のミスマッチと言っても、切り口によって不一致が生まれる部分は異なります。大別すると、以下3つの要素に大別されるでしょう。
・スキルのミスマッチ
・雇用条件のミスマッチ
・労働環境のミスマッチ
このように、技術面・待遇面・働き方の観点で差分を無くす必要があります。
求人募集や採用ページを作成する際には、上記の要素を明確に打ち出すようにしてみましょう。
採用のミスマッチについて詳しくはこちらの記事でも解説しています。併せてご参照ください。
エンジニア採用のミスマッチどう防ぐ?原因や防止のコツを解説!
プログラマーが働きやすい環境を作る
プログラマーが働きやすい環境を整備することも大切です。例えば、プログラマーの多様な働き方を認める取り組みも、働きやすい環境を作るために重要な対策です。
例えば、従業員のフルリモート勤務を認めたり、フレックスタイム制度を導入したり、新しい働き方を取り入れたりなどが挙げられます。ほかにも、コミュニケーションを取りやすい環境を作り、新しい事に挑戦しやすい環境の構築も効果的です。
このように、社内の風通しを良くして、時代に合わせた働き方を導入することで、プログラマーが働きやすい環境が整えられます。職場改善の方向性に悩まれる場合は、アンケートの実施などで社内の声に耳を傾けてみるなど工夫してみましょう。
採用したプログラマーがスキルを向上できる仕組み作り
プログラマーを採用した後は、効率よく適切な方法で教育を行う必要があります。教育を怠っていると、戦力となる人材が確保できないため、実質的に人材不足の解消につながりません。人材教育の実施は、企業のIT人材のスキル向上にもつながります。
社内エンジニアに関しては、業務も含めてシステム設計ができるようなプログラマーが期待されるでしょう。そのような観点で、求められる教育は「技術教育」「マネジメント教育」「業務知識」の3点です。
社内のプログラミング教育については、こちらの記事をご参照下さい。
プログラミング教育のポイント|教えるだけでは育たない?
採用時のミスマッチ防止&採用後の育成に使えるサービス
プログラマーの人材不足による採用難は今後も続くと予想されます。そのような情勢においては、採用時のミスマッチを防ぎつつ、採用後は効率良く適切に教育できる環境づくりが必要です。
この課題に対する解決策となるサービス「TOPSIC(トップシック)」についてご紹介します。
TOPSICでプログラミングスキルを判定
TOPSICはJavaやC#、PHPやCOBOLといった現在主流のプログラミング言語にすべて対応したプログラミングスキルの判定サービスです。著名な英語検定試験・TOEICのように、プログラマー自身のプログラミングスキルを客観的に測定できます。
サービスはクラウドで提供され、6段階の難易度の問題が組み合わされたテストを行います。時間は60~90分で、回答が完了するとサービスが自動採点を行い、スキルが判定される仕組みです。
このプログラミングテストを実施することで、採用前後におけるスキル面のミスマッチ防止につながるでしょう。
また、TOPSICは人材教育にも有用です。成績や成長を見える化でき、社員の目標管理やモチベーションも高められます。
まとめ
少子高齢化の影響もあり、日本の人材不足は深刻です。特に市場が拡大しているIT業界において、プログラマーの人手不足問題は大きな課題で、解決策を模索している企業は少なくありません。
企業としてはプログラマーの働きやすさに配慮しつつ、効率良く適切な方法で教育を行う必要があります。仕事環境や報酬といった企業ごとの現状の課題を整理して、優れた人材を確保するための施策の実施を検討してみましょう。
また、施策の一環として、自社プログラマーや入職希望者のスキルを整理することも大切です。そうした際にTOPSICを活用いただければ、プログラミングスキルの見える化を簡単に行えます。採用後のミスマッチを防げるほか、採用後も課題となる能力を分析できます。
導入を検討される方は、ぜひこちらのページをご参照ください。