みなさんはノーコード(NoCode)をご存知でしょうか?
近年、米国などで盛んに活用され始めており、例えばGoogleがノーコード開発プラットフォームのAppsheetを買収したり、AmazonがAmazon Honeycodeというノーコード開発ツールの提供を開始するといった出来事があり、勢いを増しています。
IT業界やITに関わりのある職業であるなら、こういった新しい開発ツールにはぜひ触れておきたいですよね。そこで、この記事ではノーコードの概要や特徴、利点、問題点やノーコードで作られているアプリなどについてご紹介します。
ノーコードとは
ノーコードとは「プログラミングを一切しないでWebアプリやモバイルアプリを開発すること」です。NoCodeなので名前そのままですね。
また、ノーコードは「ノーコード開発をするためのプラットフォーム」を指す言葉でもあります。代表的なノーコード開発プラットフォームに「Glide」や「Adalo」「Bubble」などがあります(詳細は後述)。
アメリカのGAFAが主導しており、最近日本でもノーコード開発の動きがちらほら現れ始めています。というのも、日本は慢性的にIT人材が不足しており、コードを書かずに開発できるノーコードは日本のIT人材不足を補えるツールになり得るからです。
ノーコード開発の特徴
ノーコードはあらかじめ用意されているパーツをドラッグ&ドロップしながら組み立てていくのが主流です。
ノーコード開発はとにかくスピードが命。モック(アプリケーションの外側のみ作成して、アプリの動きを直感的に理解できるもの)やMVP(最小限の機能のみを作成し、完成形のイメージをつけるためのアプリ)を作る場合に特に力を発揮します。
ノーコード開発なのでコードを書く代わりにGUI操作で画面を設計していきます。また、画面を設計するだけでなく、簡易的とは言えバックエンド(アプリケーションの裏方作業)の設計・開発までできるようなプラットフォームも存在します。
ノーコード普及の背景
IT人材不足
例えばフルスクラッチでアプリ開発を行う場合、アプリ開発ができる人材を多く抱えている企業は決して多くないので、システム部門を通じてアプリ開発会社に委託するケースが一般的です。
しかし、委託先とのやりとりには多少なりとも技術的な知識が求められることから、開発に理解のあるIT人材は自社で一定数雇用しておく必要があります。しかし、IT人材は慢性的に不足しており、年々深刻化しているのが実情です。IT人材を新たに採用・育成していく際のコストを考慮すると、たとえ開発会社に委託する場合であっても、アプリを開発・運営するのは現実的ではないと判断されるケースも少なくないでしょう。
一方、ノーコード開発であれば、上記のような人材がいなくてもアプリ制作が可能となります。既存のスタッフのみでアプリ開発に取り組めるため、IT人材を新たに採用・育成する必要がなくなるのです。
クラウドの一般化
ノーコード開発の多くは、クラウドサービスとして提供されています。なので自社内にサーバーを設置することなく、クラウド上でデータを管理・運用していくのが一般的です。従来、顧客の個人情報や自社の機密情報を扱うシステムをオンラインで開発することは敬遠される傾向がありました。情報漏洩などのセキュリティリスクの観点から、システムは外部ネットワークと切り離されていることが望ましいと考えられてきたからです。
しかし、近年ではクラウドサービスが一般化し、業務利用されるケースも増えてきました。セキュリティリスクへの対策が充実してきたことから、クラウドサービスへの信頼性が高まっています。
課題の多様化と複雑化
企業が直面する課題が多様化・複雑化の一途をたどっていることも、ノーコードが注目される一因です。今の企業は、じっくりと時間をかけて一つひとつの課題を解決していくというよりは、次々と直面する課題に対してスピーディーに対応することが求められています。課題に対して可能な限り早く対応していくには、開発の工数や所要時間をできるだけ削減しなくてはなりません。何ヵ月もかけて1つの課題への解決策を用意しているようでは、とても間に合わない状況になりつつあるのです。
その点、ノーコード開発であれば、開発の工数や所要時間を大幅に短縮することができます。多様化・複雑化する課題に対応していく上で、ノーコードは適した開発手法といえるでしょう。
ノーコードのメリット
次にノーコードで開発するメリットを見ていきましょう。
とにかく早い
先ほども書きましたが、とにかく素早く完成形をイメージできる外側だけのアプリを作成する場合に向いています。
また、フロントエンド(ユーザーから見えるところ。WebページやUI/UXなど)開発に適しているので、複雑なシステムよりも比較的シンプルなアプリを開発するのに適しています。
低コストなため気軽にアプリの開発に踏み込める
一般的なアプリ開発は要件定義→外部設計→内部設計→実装→テスト→リリースという多くの手順を踏み、非常にコストがかかります。
一方、ノーコードは1人でも十分にアプリ開発が可能なので、自分の興味のある分野のアプリを思いついたらすぐ開発→リリースすることが可能です。コストを大幅に縮小しつつハイレベルなアプリを開発できるので、ニッチなアプリを開発するハードルが大幅に下がります。
ノーコードの問題点・不向きなところ
あえてノーコードの問題点もあげてみましょう。
複雑なシステム開発はできない
爆速で開発できる反面、細かい要件がある複雑なシステムを作るのには向いていません。複雑なシステム案件は従来の開発手法を用いた方が、後戻りがなくスムーズに開発できます。
プラットフォームに依存している
現時点ではノーコード開発はプラットフォームに依存しています。もしプラットフォームがサービス終了してしまうと、そのアプリを改修できなくなってしまうので、特に新興のプラットフォームを検討する場合はサービス終了のリスクも加味して選びましょう。
また、各プラットフォームは利用料が設けられているので、利用料金の引き上げにも弱いです。この点はプラットフォーム同士で互換性が出てくると改善されそうですが、今のところはリスクと言えるでしょう。
ローコードとは?
少し話はそれますが、ノーコードと似た「ローコード」という開発手法も存在します。
ノーコードの恩恵を受けつつ、柔軟なシステム開発をするためにコーディングできる余地を残したようなもので、100%コーディング開発とノーコードの中央あたりに位置しています。ノーコード開発と対になってよく紹介されるので、覚えておきましょう。
ノーコード開発プラットフォーム
ここでは代表的なノーコード開発プラットフォームを見ていきましょう。
Glide
GlideはPWAアプリケーションを開発する前提で提供されているプラットフォームです。
PWAとは「Progressive Web Apps」の略で、Webサイト上でネイティブアプリのような動きをするアプリケーションのことを指します。PWAとして有名なのはTwitterでしょうか。TwitterはWebサイトから開いてもネイティブアプリと同じようなUI/UXを提供しています。
GlideはGoogleスプレッドシートに入力して読み込むだけでアプリケーションを開発できるようになっており、非エンジニアの人でも簡単にモバイルアプリケーションを作成することができます。
Adalo
Adaloは洗練されたUIが特徴的なプラットフォームです。
登録するとすぐにアプリ開発が可能で、数種類のテンプレートから一つを選んでカスタマイズするだけでオリジナルのアプリが開発できます。
アプリ開発はデザインとロジック両方を考える必要がありますが、デザインはAdaloが用意してくれているテンプレートを使い、ロジックのみに意識を集中することができます。
パワーポイントと同じような感覚でアプリ開発ができるので、直感的で分かりやすいのも特徴です。
Bubble
主にWeb開発で採用され、最もボリュームがあり、あらゆるケースをサポートできるプラットフォームです。
コーディングが必要な細かいレベルの要件も網羅しており、Bubbleでできないなら現時点でのノーコードではWeb開発できないと言えるレベルです。
一方、他のプラットフォームよりも覚えなくてはならないことも多く、比較的難易度の高いプラットフォームでもあります。
ノーコードとローコードの違い
ノーコードはソースコードを記述せずに行いますが、ローコードは「なるべくソースコードを書かない」というサービスを指します。
一部ですがソースコードを記述する必要性があるため、専門知識が必要になります。
ただしその分、ローコードの方が拡張性は高く、高性能なシステム開発がしやすいでしょう。
まとめ:ノーコードは強力な新世代ツールである
ノーコードの解説、いかがでしたか?ノーコードが「コーディングを一切しないのに強力なアプリケーションが短時間で作成できてしまう」ツールであることがお分りいただけたのではないかと思います。
とはいえプラットフォームにも一長一短があり、自分がどんなアプリを開発したいのかによって選択肢が異なってきます。ここで紹介したツールはノーコード業界のほんの一部分です。それだけノーコードは今急速に発展しています。
コーディング作業が無くなることはないでしょうが、ノーコードは今後一定の地位を持ち、コーディングの文化と共存共栄していく関係になり得ると思います。ぜひ一度触ってみてくださいね!
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