IT人材の採用や育成にあたっては、有する専門性やスキルレベルを把握しなくてはなりません。そのために役立つ指標が「ITSS」です。本記事では、ITSSの概要や他のスキル標準との違い、社内で効果的に運用するポイントなどについて解説します。
ITSS(ITスキル標準)とは高度なIT人材育成のために定められた教育の指標
「ITSS」は「IT Skill Standard」の略であり、日本語で「ITスキル標準」と表記します。IT人材が有する専門性やスキルレベルを評価するための指標であり、経済産業省によって2002年に策定されました。
企業がIT人材を採用するにあたって重視する要素には、「どの程度のスキルを有しているのか」「実務を任せられるだけの専門性があるのか」などがあります。求める専門性やスキルを有していない人材を採用したとしても、思ったような成果を挙げられず、採用コストが無駄になってしまうでしょう。
また、IT人材の育成においても、個々の従業員が持つスキルレベルをしっかりと把握しなくてはなりません。有するスキルや足りない部分を把握することで、ベストな育成方針を打ち出せます。
ITSSは、企業におけるIT人材の採用や育成に役立つ評価指標です。適切に運用することで、採用・育成対象となる人材のスキルを可視化でき、キャリア計画にも活用できます。
ITSSが定められた背景
IT産業は1990年代後半から市場規模が大きく拡大し、ITが欠かせない時代へとシフトするとともに、企業はより優れたスキルを有する人材を確保する必要性に迫られました。当時は日本政府も国を挙げてIT産業の発展を後押ししており、重要な国家戦略として位置付けていました。ただし、IT産業の発展には高度なスキルを有するIT人材の育成が欠かせません。
IT産業をけん引できるほどの優れた人材を育成するには、人材が有する専門性やスキルの把握が必須です。ただし、当時はIT人材のスキルレベルを定量的に把握する評価指標は存在しませんでした。このような背景から、人材が有するスキルレベルを測る指標として、ITSSが策定されました。
ITSSと他のスキル標準との違い
ITSSと似たスキル標準として、「UISS」や「ETSS」、「CCSF」などが挙げられます。それぞれの概要や、ITSSとの違いについて解説します。
ITSSとUISS(情報システムユーザースキル標準)との違い
「UISS」は「Users’Information Systems Skill Standards」の略であり、「情報システムユーザースキル標準」と呼ばれます。情報システムを利用するユーザー企業が、ITを日々の業務で活用するにあたってどのような機能を備えるべきなのか、必要なスキルは何か、といったことを整理したリファレンスモデルです。
ITSSがサービスを提供する側のスキル標準であるのに対し、UISSはITサービスを利用するユーザー企業側のスキルを評価します。ITを効果的に活用できれば組織力の強化につながる一方、うまく生かせない企業との差が大きくなることが懸念されます。そこで、ユーザー企業間の能力差が大きくならないようにすることを目的としてUISSの設立が推進されました。初版は2006年に公表され、最新版となるVer.2.2は2012年に公開されています。
ITSSとETSS(組込みスキル標準)との違い
「ETSS」は「Embedded Technology Skill Standards」の略で、日本語で「組込みスキル標準」と表記します。組み込み系ソフトウェアの開発に求められるスキルを整理し、体系化した指標です。
組み込み系ソフトウェアの需要が高まる一方で、開発者が不足している課題を解決するため誕生したのがETSSです。組み込み系ソフトウェア開発に要する技術スキルを3つにカテゴライズし、4段階のレベルに評価することで人材のスキルレベルを可視化できます。
ITSSとCCSF(共通キャリア・スキルフレームワーク)との違い
「CCSF」は、「Common Career Skill Framework」の略称であり、「共通キャリア・スキルフレームワーク」と呼ばれます。IT人材の育成をサポートする新たな枠組みとして誕生した経緯があり、ITSSやUISS、ETSSなどの参照モデルとして位置づけられています。
スキル標準を導入する必要性を理解しているものの、自社にあわせた活用が難しいと導入を断念してしまう企業は少なくありません。CCSFは、企業のビジネスモデルや求める人材像の変化に対応するため誕生しました。
各スキル標準を参照できるため、自社にあわせたカスタマイズが可能です。複数のスキル標準を複合的に利用できるようになり、管理しやすくなるのもメリットです。
ITSSが定める7段階のレベル
ITSSでは、人材を評価する際のレベルを7段階にして定めています。レベル1はいわゆる入門レベルであり、技術者として最低限求められる基礎知識を有していることを示します。
中間に位置するレベル4は、ハイレベルの技術者として認められるレベルであり、業務課題の発見や解決を自ら率先して行える能力を有します。最高位のレベル7は、高度な専門性と技術を有するプロフェッショナルと認められるレベルであり、世界で活躍できる人材と評価されます。なお、レベル4以上が高度IT人材に該当します。
ITSSにおける11の専門職種
ITSSでは、ビジネスの実情に応じて11の専門職種を設定しています。まず、市場の動きや顧客が求めるものの把握や戦略立案・実行などを担う「マーケティング」、顧客へのベストな提案と良好な関係の維持に努める「セールス」、顧客のビジネスを裏方としてサポートする「コンサルタント」があります。
また、ITアーキテクチャ設計を担う「ITアーキテクト」、プロジェクトの総合的な管理を担う「プロジェクトマネジメント」、顧客のニーズにあわせたシステム設計や導入を行う「ITスペシャリスト」、アプリケーションの設計から開発・導入・保守までを一貫して担う「アプリケーションスペシャリスト」も含まれます。
他にも「ソフトウェアデベロップメント」「カスタマーサービス」「ITサービスマネジメント」「エデュケーション」の全11種が専門職種として設定されています。
ITSSを社内で効果的に高めるコツ
ITSSはさまざまな用途に活用できるため、目的意識をもって運用しないと成果は期待できません。ITSSを効果的に運用するには、まず何のために導入するのかを明確にする必要があります。
ITSSの活用シーンとしては、人事評価が挙げられます。また、人材採用や育成においてもITSSの活用が可能です。目的にあわせて戦略的に活用することで、望む成果が期待できます。
また、ITSSを継続的に活用するためには、運用フローを策定しましょう。運用フローを定めていないと、導入直後だけ使用しただけで次第に使われなくなる、といったことになりかねません。
エンジニアのITスキルを測るにはツールの使用が効果的
エンジニアのITスキルを評価するには、プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC(トップシック)」の導入が有効です。社員教育や採用時におけるスキルチェックに活用できます。
オンライン上で簡単に利用できます。登録してテストを設定すれば、すぐにテストの実施・判定が可能です。簡単にスキルチェックを実施できるため、採用や育成コストの削減にもつながります。多くの企業をはじめ、高校や大学など教育機関も導入されているため、安心して利用できる点も魅力です。
まとめ
「ITSS」はIT分野における人材のスキルを測定するための指標であり、採用や育成に役立ちます。効果的に運用するには、導入前に明確な目的を定め、運用フローを構築しておくことが重要です。また、エンジニアのプログラミングスキルをチェックしたい場合は、手軽にテストを実施できコスト削減も実現できるツールの利用が効果的です。
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