COBOL(コボル)の将来性とは? 言語の需要とメリット・デメリットから分析

 2023.12.07  株式会社システムインテグレータ

開発の現場で主流のプログラミング言語といえば、PythonやC、Javaなどが挙げられますが、かつてはCOBOLがよく用いられていました。古い言語ではあるものの、近年再びCOBOLに注目が集まりつつあります。本記事では、COBOLの概要やメリット・デメリット、将来性などを解説します。

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COBOL(コボル)とは?

COBOLの正式名称はCommon Business Oriented Languageで、1959年に開発された長い歴史をもつプログラミング言語です。もともと事務処理を目的に開発された経緯があり、扱いやすさに注目が集まった結果、またたく間に世界中へ広がりました。

COBOLが誕生する以前にもさまざまなプログラミング言語があったものの、どれも理解が難しく、習得も困難だという問題がありました。そこで、事務処理に特化した高級プログラミング言語として開発されたのがCOBOLです。

COBOLの需要

古いプログラミング言語ではあるものの、いまだにCOBOLは根強い人気を誇っています。詳しくは後述しますが、COBOLは高い保守性や可読性、計算処理能力といった強みがあるため、現在でも行政機関や金融機関、企業の基幹システムや予約システム、航空会社などで使われています。

それを裏づけるデータとして、「日経クロステック」が2021年に実施した「プログラミング言語利用実態調査2021」を見てみましょう。同調査によると、上位にはPythonやJavaScript、Cなどの人気言語がランクインしていますが、COBOLも11位につけています。なお、COBOLの下にはRubyやGo、Swiftなどがランクインする結果となりました。

このように、AIやロボット開発、IoT開発、データ分析などに長けたプログラミング言語が幅を利かせている現代においても、COBOLには一定の需要があることが分かります。

参照元:プログラミング言語利用実態調査2021 | 日経クロステック(xTECH)

COBOLを使うメリット

いまだにCOBOLの人気が衰えない理由には、使うだけのメリットがあるためと考えられます。主なメリットは、可読性の高さとOSを選ばない優れた汎用性、高度な計算処理能力の3つです。

他の言語より可読性が高い

可読性とは、読みやすさや理解のしやすさを指します。COBOLの構文は英語に近いため、プログラミング初心者でも理解しやすい点がメリットです。英文を読むようにコードを理解できるため習得しやすく、短期間でシステム開発に取り組める可能性があります。

可読性の高さゆえに、多くのチームメンバーが理解できるソースコードを書けるため、スムーズな開発を実現できるのも魅力です。万が一トラブルが発生した際にも、コードを読んで速やかな対応が可能です。

OSに依存しない

COBOLはWindowsやMac、Linuxなど主要なOSで使用できます。特定のOSに依存することなく使用でき、別のOSへ完成したシステムを移行させる、といったことも可能です。

OSに依存しないため、さまざまな開発環境で使用できる点が大きなメリットです。自分好みにカスタマイズした環境で開発を行い、移植も容易であることから現在でも一定の人気を誇ります。

計算処理に長けている

元来、COBOLは事務処理を主目的に開発されました。計算処理やデータ処理に優れていることから、今でも金融機関で使用されています。

膨大なデータの処理が必要なケースでは、一般的に処理速度が低下しがちですが、COBOLならその心配がありません。高速で処理を行えるため、大量のデータ処理に適しています。

10進法で処理を行っているのもCOBOLの特徴です。通常、コンピューターがデータを処理する際には2進法を用います。そのため、10進法の数字を処理する際には誤差の発生を招くケースが少なくありません。一方、COBOLの処理は10進法を用いているため、誤差を最小限に留められます。

COBOLを使うデメリット

COBOLにメリットがあるのはたしかですが、デメリットがあることも覚えておく必要があります。主なデメリットとしては、開発案件の少なさやエンジニアの高齢化が挙げられます。

開発案件が減少している

現在、開発で主流なのはPythonやC、Javaなどのほか、スマホアプリの開発が可能なSwiftやKotlinなどです。AI活用やデータ分析、ロボット開発などトレンドとは無縁の存在であり、新規開発の案件はほとんどありません。

狙い目としては、現在でもCOBOLで構築したシステムを使用している企業の保守案件が挙げられます。Pythonをはじめとした人気が高いプログラミング言語とは異なり、COBOLを習得しようと考える人はそこまで多くありません。そのため、習得すれば保守案件を取得できる可能性が高まります。

ただ、近年はCOBOLで構築したシステムを刷新しようとする動きも加速化しつつあるため、いつまで保守案件を取得できるかは不明です。

エンジニアが高齢化し、減っている

金融機関や行政機関などの現場で使用はされているものの、近年における開発の主流はPythonやC、Javaなどニーズの高い言語です。新たに習得しようと考える人が少なく、エンジニアの高齢化が進んでいるのは大きな課題です。

エンジニアの高齢化が進み技術者が不足すると、トラブル発生時に迅速かつ適切な対応ができません。その結果、大きなトラブルに発展するリスクも高まります。

また、COBOLの基本的なスキルを習得し、現場で経験を積もうにも、エンジニアの高齢化と人材不足がさらに進むと指導できる人がいなくなるかもしれません。結果的に、自身で試行錯誤しつつスキルを磨く必要があり、一定のレベルへ到達するまでに膨大な時間を要するおそれがあります。

COBOL技術者の将来性

COBOLは、いまだに行政や金融機関の大規模システムに用いられており、保守やリプレース案件は発生します。大規模なシステムをすべて刷新するとなると、莫大なコストと時間がかかるため、しばらくはCOBOLが使用されると考えられます。

このような理由から、まだしばらくのあいだはCOBOL技術者の需要はなくならないとの声が一般的です。実際、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るったとき、アメリカではCOBOLで構築した行政の給付申請システムがダウンし、州知事がCOBOL技術者の必要性を語っています。

新規開発案件は今後も減少の一途をたどると考えられるものの、行政や金融機関などがCOBOLで構築した大規模なシステムを使い続ける以上、COBOL技術者には一定の需要が残り続けると予測されます。ただ、その需要が永遠に続くとは考えにくいため、COBOLのみに固執するのではなく、汎用性の高いプログラミング言語を扱えるエンジニアを育成しましょう。さまざまな開発に取り組めるため柔軟性を保持できます。

まとめ

古い言語ではあるものの、いまだにCOBOLで構築されたシステムは存在しており、現場でも使われています。可読性の高さや優れた計算処理能力などのメリットがある反面、開発案件が少ない、エンジニアが高齢化しているなどのデメリットがあることも覚えておきましょう。

COBOLは歴史ある言語ゆえに情報も豊富なので、やる気さえあれば独学でも学べます。プログラミングスキルの測定や強化を効率的に行えるツールやサービスもあるので、それらを活用すれば短期間で一定のスキルを有するエンジニアを育成したい場合に役立ちます。

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