文部科学省が進める「小学校プログラミング教育の手引」とは?

 2021.10.04  株式会社システムインテグレータ

2020年、文部科学省は小学校におけるプログラミング教育の必修化をスタートしました。本記事では、文科省の定める学習指導要領や「小学校プログラミング教育の手引」の内容をもとに、小学校におけるプログラミング教育の狙いや期待される効果などについてご紹介します。

2020年からプログラミング教育が小学校で必修に

文部科学省が進める「小学校プログラミング教育の手引」とは? 1

2020年度から、全国の小学校でプログラミング教育の必修化がスタートしました。とはいえ、「プログラミング」という科目が増設されたわけではありません。国内の教育標準化のために文部科学省が発行している「学習指導要領」によると、基本的に小学校でのプログラミング教育は算数や理科をはじめとするこれまでの科目の中に組み込まれる形で実施されます。

また、各小学校にある程度の裁量がある点も特徴的です。そのため、ある学校では総合の時間を割いて集中的にプログラミングの教育をする場合もあれば、別の学校ではクラブ活動などで関心のある児童を中心に指導するなど、教育の質に差が出ることが予想されます。学校がどのようなプログラミング教育を実施する予定かは一概には言えないので、通っている学校(または通学予定の学校)に確認するしかありません。

文科省が推進する「小学校プログラミング教育の手引」

前項で触れたように、プログラミング教育は各小学校の裁量に任されている割合が高い分野です。しかし、現実問題として全国の各小学校にIT技術について専門的に学んだ教師が在籍しているわけではありません。プログラミング教育が本格的に開始するに当たって不安を感じているのは小学校の児童やその保護だけではなく、現場の教員も同様でしょう。

こうした現状を鑑みて、文科省は「プログラミング教育と言っても何をしたらいいのか分からない」という現場の不安を払拭するために、小学校におけるプログラミング教育についての基本的な考え方をわかりやすく解説した「小学校プログラミング教育の手引」という資料を公開しています。この手引きには、プログラミング教育に対する現場の不安の緩和や、小学校におけるプログラミング教育で育む力の向上、プログラミング教育の狙いの明確化といった目的があります。

なぜ小学校にプログラミング教育を導入するのか

文科省が小学校にプログラミング教育を導入した理由の1つは、慢性的に不足しているIT人材の拡充を図るためだけではありません。現代社会はスマホや家電をはじめ、コンピュータなしでは生活が成り立たないほどIT化が進んでいます。現代においてパソコンやメールを始めとするIT/ICT技術をまったく使わない職場は少数派でしょう。

こうしたIT社会をさらに発展させていくためにプログラミングを始めとする基本的なITの素養は、IT人材以外の人々にとっても役に立ちます。小学校のうちからプログラミングについて学ぶことで、子どもたちの可能性を広げることにつながると期待されているのです。

小学校プログラミング教育で育む力

学習指導要領によると、小学校におけるプログラミング教育の狙いは大きく分けて3つあります。それは「プログラミング的思考を育む」「現代は情報技術によって支えられていると気づくこと」「各教科等での学びをより確実なものとすること」です。

文部科学省が進める「小学校プログラミング教育の手引」とは? 2

プログラミング的思考(アルゴリズム思考)とは

“自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力”
と定義されています。
(引用元:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/21/1416331_001.pdf

要約すると、「自分の目標を達成するために順序立てて考える力」であり、いわゆる「論理的思考能力」に近しいものです。そして、こうした論理的思考能力は、たとえプログラミングに関係ない事柄にも等しく重要な能力であると位置づけられています。

また、すでに触れたように、プログラミング教育は個別の科目として設置されるのではなく、既存の科目の中に組み込まれる形で適宜実施されます。たとえば、「学習指導要領」や「小学校プログラミング教育の手引き」には、小学校5年生の算数において「プログラミングを用いて、正多角形の意味をもとにした正多角形(正方形、正三角形、正六角形等)をかく方法を考える」という問題例が示されています。この問題に従ってプログラミングで正多角形を書く場合、児童はプログラミングの使い方を学ぶと共に、正多角形の定義を明確にしてコンピュータに命令をしなければなりません。言い換えれば、各単元に組み込まれたプログラミング教育は、その初歩的な使い方を学ぶと共に、その単元の理解を促進することも狙って実施されているのです。

こうした取り組みを通じて、児童はプログラミングに親しみ、その知識を深め、どんな技術で現代の社会が成り立っているのかについて知見を深めることができます。それと同時に「知識や技能」「思考力、判断力、表現力」「学びに向かう力、人間性」の3つの主な資質が育まれていきます。

現在使用されているプログラミング教科書

小学校におけるプログラミング教育は既存の各単元内で扱われるため、小学校で使用されるプログラミング単独の教科書はありません。また、小学校のプログラミング教育の目標は、あくまで「プログラミング的思考」の獲得であって「プログラミング言語」ではない点にも注意が必要です。

これらの理由から、文科省が2019年に公表したプログラミングの教科書は、それ単体で出版されたものではなく、算数や理科、図画工作など、他科目の教科書の中の単元に組み込まれる形になっています。基本的には、先に挙げた正多角形の例のように、プログラミングの考え方に触れる程度で、本格的にプログラミング言語などを解説する内容には至っていません。

プログラミング教育における小学校の取り組み事例

2020年度が必修化のスタートですが、一部の小学校では、すでにプログラミング教育の取り組みが進められています。

たとえば、岡山県は過去2年間に29ものプログラミング教育の実践事例を記した「小学校プログラミング教育実践事例集2020」を公開しています。この事例集では各取り組みについて、実施年度、実施教科、「小学校プログラミング教育の手引」に基づいたプログラミング教育の種別、使用した教材などがまとめられています。さらに、各実践において「プログラミング的思考を深めるためのポイント」も要チェックです。

また、北海道の石狩市教育委員会は、プログラミング教育の必修化に向けてプロジェクトチームを組織し、教員研修や授業支援を行うなど、入念にプログラミング教育の準備を進めてきました。石狩市はこうした取り組みの成果や各学校において行われた指導事例を「プログラミング教育指導事例集」として公表しています。こうした諸事例については、文科省等が運営している「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」でも確認できるのでぜひ参考にしてみてください。
(参照元:「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」

IT人材の教育に最適な「TOPSIC」

プログラミング教育を進める上で課題となるのが、学習者のプログラミングスキルをいかに把握・評価するかです。近年はIT化が進み、評価できるシステムや試験も増えてきており、その中でも特にIT人材の教育分野で活用できるのが株式会社システムインテグレータの「TOPSIC」です。このサービスはプログラミングスキルを客観的に判定します。

TOPSICでは、初心者から上級者まで、プログラミングスキルをリアルタイムに判定することが可能です。TOPSIC-PGとTOPSIC-SQLの2種類があり、TOPSIC-PGはプログラミングの基礎であるアルゴリズムを中心としたスキル判定に対応しています。一方、TOPSIC-SQLはデータベース言語であるSQLの実務的スキルを判定するサービスです。このようにTOPSIC-PGとTOPSIC-SQLはそれぞれ重点を置いているスキルが異なるので、ユーザーは自身のニーズに合わせたサービスを選ぶ必要があります。

英語の実践的の習熟度を図るテストとしてはTOEICがありますが、TOPSIC はいわばプログラミング版のTOEICに例えられます。TOPSICは、プログラミングスキルを客観的な指標で把握することが可能なので、多くの企業において採用人事の評価項目として用いられているほか、大学や高校などの教育現場においても活用されています。

TOPSICの導入事例

実際の活動事例を紹介します。
多摩大学では「ゼミ力の多摩大」を目標に掲げ、プログラミング教育にTOPSICを利用しています。現代のIT環境は非常に便利で、何かをプログラムする場合も既存のツールを組み合わせることで多くのことができてしまいます。しかし、学生がその便利さを知ってしまうと、アルゴリズムに関する基礎的なスキルや知識の習得が疎かになる可能性があります。そこで、多摩大学の一部のゼミでは学生にアルゴリズムを身に付けさせるためにTOPSICを導入し、基礎学力の向上に教育に役立てています。

また、立教池袋中学校・高等学校の数理研究部では、TOPSICを通じてアルゴリズムの楽しさを知るきっかけ作りに活用しています。同校はプログラミングコンテストで数々の実績を持っていますが、アルゴリズムについて詳しい学生は少数派でした。アルゴリズムはプログラミングを習得する上でも非常に役立ちますが、「数学が現実世界でどのように活用されているか」を理解するための入り口としても有用なものです。同校の数理研究部ではTOPSICを活用してアルゴリズムを用いた様々な課題に繰り返し取り組むことでアルゴリズムを考える力を鍛えています。

まとめ

小学校で必修化されたプログラミング教育について「小学校プログラミング教育の手引」をもとに解説しました。プログラミング教育では、プログラミング言語の習得よりも、プログラミング的思考、ひいては論理的思考能力の獲得が目標とされています。こうした能力を身に付けられれば、子どもの将来の可能性は広がっていくことでしょう。


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