働き方改革などに伴いDXを推進する企業が増えつつある中、IT人材の確保・育成は多くの企業が共通して持つ課題といえます。そこで本記事では、日本におけるIT人材の現状について解説するとともに、IT人材の育成などに関する経済産業省の取り組みについてご紹介します。
深刻化するIT人材不足
「DX」や「ITモダナイゼーション」などの言葉がそこかしこで飛び交っていることからもわかるように、日本では現在、IT技術の活用が社会的に推進されています。それはAIやIoT、クラウドなどの先端技術を活用して、企業の国際競争力を高めることはもちろん、少子高齢化に伴い不足していく労働人口の穴埋めを期待してのことでもあります。
その一方で、そうしたIT技術の活用をリードすべき肝心のIT人材が、質・量ともに著しく不足していることが大きな課題となっています。IT人材の需要と供給のアンバランスは今後、さらに悪化することが見込まれており、経済産業省の報告によると、2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足すると予想されています。
また、2021年3月に経済産業省が発表した「我が国におけるIT人材の動向」によれば、日本のIT人材は東京のIT関連企業に集中しており、他国に比べてユーザー企業に就職する割合が顕著に低いことが報告されています。
(参照元:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/001_s01_00.pdf)
こうしたIT人材の就業地・就業領域の偏りは、とりわけ地方におけるDX推進の阻害要因になっていると考えられています。すなわち、日本においてはIT人材の絶対量の不足に加え、社会全体にIT人材が十分に広がっていないことも、ひとつの問題として挙げられるでしょう。
IT人材採用→IT人材育成の流れが加速
IT人材の不足が指摘される一方で、一部企業ではIT人材の採用と育成を強化する動きが出てきているのも確かです。もちろん、AIやIoTといった先端技術について高度なスキルと知見を持つ人材、いわゆる「先端IT人材」を雇用したり育成したりするのは容易ではありません。また、いくら優秀なIT人材を雇用しても、その上司や経営層に基本的なITリテラシーが欠けている場合、その能力を活かしきるのは難しく、意思疎通にすら難が生じることもありえます。しかし、ほとんどの企業において何らかのICT技術が活用されている現在、基本的なITスキルは誰もが持っていることが望ましいものです。実際、2020年に小学校においてプログラミング教育が必修化したのも、こうした考え方によるところが大きいでしょう。
このように、現在日本において基本的なITスキルやITリテラシーは、一部の専門家だけでなく、社会人なら誰もが持つべき基礎的な教養として認識されつつあります。しかしながら、先述したように日本ではまだまだIT人材が不足しています。そのため、企業は外からIT人材を採用するだけでなく、既存の社員を自社で教育し、IT人材として育て上げる必要があるのです。
経済産業省が提言する「IT人材の育成」
では実際に、IT人材を育成するためには、具体的にどのような取り組みが重要になるのでしょうか。以下では、IT人材の育成・確保に向けて経済産業省が実施している各種施策についてご紹介していきます。1:高度IT人材に求められる能力の「見える化」
採用するにせよ育成するにせよ、高度なスキルを持ったIT人材の獲得において第一に重要となるのは、所持しているITスキルの「見える化」です。これが可能になっていないと、採用する際にも仕事を割り振る際にも、本当にその人物のITスキルが自社の求めるレベルに達しているかどうかわからないからです。経済産業省でも、IT人材の育成における「能力の見える化」の重要性は把握しており、その対策を講じています。その具体的な施策としては、大まかにいえば「知識・技能の向上を目的とした国家試験の実施」「支援士制度の導入」「人材育成支援ツールの高度化・普及に向けた環境整備」などが挙げられます。
たとえば、ITスキルに関する国家試験としては、「情報処理技術者試験」や「情報処理安全確保支援士試験」などが存在します。また、基礎的なIT知識の有無を問う試験としては「ITパスポート」が該当します。経済産業省は、「情報処理の促進に関する法律」に基づくこれら資格試験の実施および資格認定によって、該当人物が一定水準のIT知識やスキルを所持していることを担保しているのです。
また、人材育成支援ツールの環境整備の実例としては、IPA独立行政法人による「iコンピテンシ・ディクショナリ(iCD)」の提供が挙げられます。このディクショナリではタスク・スキルが網羅的に表示されているため、タスク・スキル表現の標準化が期待できます。また、同法人が提供する「共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)」は、日本のIT人材に求められる各種スキル標準が整理されており、材育成や人材評価における枠組みとして役立つものです。
2:ハイレベルな若手IT人材の発掘&育成
経済産業省は、若手IT人材の発掘や育成を加速させる取り組みも実施しています。たとえば「セキュリティ・キャンプ」というプロジェクトでは、高度IT人材の育成に向けて、22歳以下の若年層向けの合宿形式による講習会を行っています。また、「U-22プログラミング・コンテスト」は、プログラミングを学ぶ若い人を対象にした、作品提出型のコンテストです。優勝者は賞金を授与されるだけでなく、その能力を存分に活かせるようにステップアップ支援も受けられます。
さらに「全国IT部活活性化プロジェクト」は、IT人材の育成を促進するため、コンピューター部など全国に存在するIT関係の部活に対して、情報発信や産業界と連携した支援などを実施しています。
このほか、2020年には小学校においてプログラミング教育が必修化となり、IT人材の確保について長期的視点に立った戦略のひとつとして進められています。
3:国際面での取組
経済産業省は国境を越えてIT人材を確保したり、人材の流動性を促進したりするために、グローバルな取り組みも行っています。具体的な施策としては、中国や韓国、インドをはじめとするASEAN加盟国と連携し、ITに関する試験制度の相互認証制度の導入が挙げられます。この相互認証協定の歴史は意外と古く、2006年時点ですでに、フィリピン・タイ・ベトナム・ミャンマー・マレーシア・モンゴルの6ヵ国において、日本の「情報処理技術者試験」をベースにした「アジア共通統一試験」が実施されていました。この相互認証協定の提携国は今や12ヵ国に上り、ITパスポート試験についても同様の取り組みが促進されています。
このように経済産業省は、国外においてもIT人材の育成やITスキルの標準化に取り組んでいます。少子高齢社会によって労働人口の減少が加速する中、こうした取り組みのもとで確かなスキルを備えたIT人材が今後、日本に流入してくることも期待できるでしょう。
4:IT人材に関する調査・報告書
経済産業省は日本におけるIT人材の状況を正確に把握するため、IT人材に関する調査・報告書の策定も定期的に行い、公表しています。たとえば「IT人材白書」では、日本企業におけるIT人材の活用状況や過不足感など、人材需給に関する調査報告を主に行っています。2020年度のIT人材白書では、新型コロナウイルス感染症の拡大以前に実施されたため、その影響があまり反映されていませんが、日本企業におけるIT人材の量・質の過不足感や担当する業務範囲などについて、変化の兆候が見え始めていることが指摘されています。また同調査では、「せっかく新しいスキルを習得しても活用できる場がない」と感じているIT人材が多いことも明らかにしており、企業の事業変革の遅さなどが原因として挙げられています。
(参照:https://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/about.html)
5:巣ごもりDXステップ講座情報ナビ
経済産業省の公式ホームページでは、カテゴリやレベルに合ったオンライン講座も紹介しています。それが「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」です。
国を挙げたDX推進などが続く中、ITスキルを自主的に学習したいと願う社会人は増えつつありますが、何から手をつければよいのかわからない人も多いことでしょう。「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」は、そのような自宅でITについて学びたい人に向けて、学習に役立つオンライン講座を紹介する無料のナビゲーションサービスです。
「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」では、「AI」「データサイエンス」「セキュリティ」などの分野やレベル別に、自分のニーズに即したオンライン講座の検索が可能です。ここで紹介されている情報を手掛かりにオンライン講座を選択・受講すれば、自宅に居ながらにして効率的なITスキルの学習が可能となるでしょう。
IT人材の教育に最適な「TOPSIC」
先述した通り、IT人材の獲得・育成においては、まず当人のITスキルの「見える化」が欠かせません。そこでおすすめなのが、プログラミングスキル判定サービスの活用です。株式会社システムインテグレータが提供する「TOPSIC」は、TOEICのプログラミング版ともいうべきサービスで、初心者から上級者まで広く、エンジニアのプログラミングスキルをリアルタイムに判定できます。TOPSICにはアルゴリズムを中心にスキル判定を行う「TOPSIC-PG」と、リレーショナルデータベース(RDB)を操作するためのSQLスキルを問う「TOPSIC-SQL」の2種類があり、ニーズに応じて柔軟な使い方が可能です。
ITスキルの「見える化」を可能にするTOPSICを利用することで、企業は自社の採用人事において、求めるITスキルを持った人材を客観的に見分けることが可能です。また、リアルタイムにプログラミングの正誤を判定するTOPSICは、トライ&エラーによる学習にも適しているため、IT人材を育成する際にも活用できます。実際、TOPSICは企業だけでなく大学や高校でも活用されており、IT教育の現場において役立てられています。
まとめ
社会的にIT人材の需要が高まる一方、労働人口自体の低下の影響も受けて、今後もIT人材は不足することが予想されます。それゆえ、企業がIT人材の充実を図るうえでは、既存の社員にIT教育を実施するのが有力な選択肢になるでしょう。プログラミングスキルを判定できるサービス「TOPSIC」の活用もおすすめです。ITスキルを「見える化」し、IT人材の教育をサポートしてくれます。
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