コーチングとは、相手の話に耳を傾け、観察と質問を通して、相手の内側にある答え・能力を引き出す技術を利用した、問題解決手法であり目標達成のツールです。
昨今のビジネス環境下では、問題が複雑で解決までの道のりが困難な場面は多々あります。そんな時に役立つ方法としてコーチングが注目されているのです。
本記事では、コーチングのの概要とビジネスの現場での活用法について解説します。「ビジネスにコーチング取り入れたほうがいいよって言われた」「名前は知ってるけど具体的にどんなものか知りたい」「自分の仕事に応用してみたい」という皆様、是非読んでみてください!
コーチングとは
コーチングの考え方
コーチングとは、ひと言で言えば目標達成のツールです。ネットで検索すると、多種多様な定義が見つかりますが、その考え方のベースは共通しています。「問題・課題の答えは相手の中に必ずある」ということです。
そのため、コーチングでは、教えたり、アドバイスしたりはしません。その代わりに「問い」を投げて、答えを「聴く」。その繰り返しで相手自身から、答えに近づくための考え方や行動、解決策を引き出していきます。
コーチングの効果
例えば、先輩が若手に対してこの手法を使うと、
- 若手が自分で問題解決の方法を導き出すスキルが上がる
- 若手が問題・課題に対して主体的・前向きに取り組めるようになる
- 上司と部下とのコミュニケーションがスムースになる
といった効果が見られます。
このことから、コーチングが人材育成や組織開発に用いられたりするのです。
コーチングが使われる場面
人材育成や組織開発の分野においては、具体的には、
- 業務目標の設定
- 目標達成のための行動計画の作成
- 必要なスキル習得計画の作成
などに使われることが多いようです。
コーチングビジネスの例(コーチング業界カオスマップ)
コーチング業界カオスマップ(株式会社スパイサー公開)という資料がありますので、こちらで共有します。実に幅広いビジネス領域で「コーチング」のビジネスが展開されていることが分かると思います。
(出所:オンラインコーチングサービスのmybuddy公開資料より)
コーチングの3原則
インタラクティブ(双方向)
「コミュニケーションは双方向で行われるもの」と思っている人は多いですが、実際には上司が部下と話す場合、上司が話して、それを聞いた部下が言われたとおりにやるという、一方通行のコミュニケーションになっていることがよくあります。「私は考える人で、君は実行部隊だ」というように、権威や権限で従わせるやり方がその典型です。
しかし、そうしたやり方だけを用いていると、コンティンジェンシープラン(不測事態対応能力)の欠如という問題が起こりかねません。つまり、すべての事柄について上司にお伺いを立てないと、物事が回らない状況になってしまう恐れが出てきてしまいます。
起こった出来事に臨機応変に対応できるようにするためには、一方通行の指示を与えるだけではなく、相手にも意見を言わせるインタラクティブなアプローチが不可欠になってきます。
こうしたアプローチは、一見すると時間や手間がかかるように思われるかもしれません。しかし、それによって自律的に行動ができる部下や、新しいアイディアを生み出せる部下を育成できれば、指示を待たなくても動いてくれるので、トータルでは上司の時間の節減にもつながっていきます。
オンゴーイング(現在進行形)
コーチングは一度受けたからといって、すぐにパフォーマンスが高まるわけではありません。継続して働きかけていくことで、徐々にパフォーマンスを向上させていく必要があります。3カ月のコーチングではそれほど変わらない人でも、1年間、できれば2、3年かけてコーチングを受けていくことで、必ず変化が見られるようになります。
特に重要なのは、コーチングセッションを受けた後に、職場に戻って実践し、その後、再びコーチングを受け、職場で実践するという繰り返しです。
行動変容は一日にして成らず。実践して、フィードバックを得て、結果を確認し、改善し、またフィードバックを得る。こうしたオンゴーイングな関わりによって、部下は少しずつ、しかし着実に変化していくのです
テーラーメイド(個別対応)
従来行われていた人材開発手法の一つに、全員に対してすべて同じ方法をとってきたことが挙げられます。しかし、人の価値観、考え方、行動パターン、物事の受け止め方、情報処理の仕方が多様化している現在、全員に同じ方法で教えても、必ずしも同じ効果が得られなくなってきているといえるでしょう。
コーチングは基本的に1対1で行います。個人差を無視して、一つのやり方を押し通したり、同じ言葉をかけたりしたところで、当然相手によって受け止め方は異なります。だからこそ、個別対応が求められるのです。
コーチングとティーチングの違い
人材育成や組織開発と言えば、講習や研修といった「ティーチング」がありますが、このティーチングとの違いがわかると、さらにコーチングに対する理解が深まります。
ティーチング
ティーチングは知識や技能・技術を相手に「教える」ことです。問題・課題の答えそのものを与えるのです。そのため、コミュニケーションは、教える側から教わる側への一方通行です。
コーチング
一方、コーチングでは、答えは相手から引き出すもので、ティーチングのようにダイレクトに与えることはしません。「問いかけ」をし、答えを聴くということを繰り返します。つまりコミュニケーションは双方向になります。
ビジネスにおいては、問題・課題には模範解答がないことが普通です。めまぐるしい環境の変化から、これまでのような研修・講習といったティーチングだけでは対応しきれないのが現状です。そんな背景からコーチングの需要や関心が高まっているのかもしれません。
コーチングを利用するメリットとデメリット
メリット
コーチングを利用するメリットとして、コーチングの対象者の
- 主体性、自発性を高める
- 潜在的な可能性を引き出せる
- 応用力がつく
などがあげられます。
コーチングにおける双方向コミュニケーションによって、部下がこれまで気づかなかった考え方や新しい視点を得て、問題解決に向けて主体的、自発的に行動するようになるのです。また、そういった個々人の成長によって、組織全体の活性化や能力向上にもつながります。
デメリット
コーチングのデメリットとして、以下のようなものがあります。
- コーチング開始時の対象者の能力が結果の大きさに影響する
- コーチは各対象者に対して、個別に対応するため、手間とコストがかかる
- 優れたコーチが必要(コーチングスキルを持つ人は少ない)
- 効果が出るまで時間がかかる
コーチングは、相手に能力があることが前提にして行います。このため、相手側に問題解決や目標達成の基本的な能力がない場合は効果が得られません。また、ひとりひとり個別に対応することが原則ですので、相手の現在の能力や価値観が多様化するとマネジメントが複雑になります。さらに、答えをダイレクトに与えるのでなく、質問を繰り返すことで気づきを待つことになりますので、効果がでるまでに時間がかかるのが一般的です。
コーチングの手法(ビジネス編)
社内にコーチングを導入するためのステップをご紹介します。
- 1.目的を具体化する
- 2.実施方法を決める
- 2-1.短期集合型のセミナーでスキルを習得する
- 2-2.マネジメント層がトレーニングを受け、認定資格を取得する
- 2-3.管理職などトップマネジメントにプロのコーチをつける
やり方①目的を具体化する
まず目的を具体化し、コーチングの定義や目的を当事者間で共有します。その際、できる限り具体的に目的を設定しましょう。
たとえば「マネージャーのリーダーシップ力を向上する」といった目標は、
- 部下による業績を向上させる
- 開発スピードを早める
- 部下の技術力を高める
- 部下と情報の共有化を進める
などと噛み砕いて考えていきます。
やり方②実施方法を決める
次に、実施方法を決めます。決定に用いられる3つの方法を説明しましょう。
②-1.短期集合型のセミナーでスキルを習得する
1つ目は、短期集合型のセミナーでスキルを習得すること。プロのコーチのレベルには届きませんが、短期集合型のセミナーでコーチングの練習をし、実際に職場で使ってみるという実施方法です。
プロのコーチが活用しているスキルから、ビジネスシーンで頻度の高い技を習得し、日常の部下との会話に取り入れます。
②-2.マネジメント層がトレーニングを受け、認定資格を取得する
2つ目は、マネジメント層がトレーニングを受け、認定資格を取得すること。
まず、マネジメントの立場にある者がコーチングスキルのトレーニングを受け、認定資格を取ります。そしてマネージャーは、部下などからコーチングの対象者を決定し、目標達成に向けてコーチングを行うのです。
②-3.管理職などトップマネジメントにプロのコーチをつける
3つ目は、管理職などトップマネジメントにプロのコーチをつけること。社内でコーチングのプロを育成するには時間がかかります。そこで経営に関わる管理職層や経営層に対し、コーチングのプロをつけて専門的なコーチングを行ってもらうのです。
この実施方法は、海外のトップ企業では一般的であり、今後日本でも普及することが考えられます。
英会話コーチングの人気コーチに聞いてみた!
コーチングの発展している分野の1つ、英語学習。
そんな英会話コーチングの人気コーチに、コーチングって「ぶっちゃけコーチングどうですか?」と聞いてみました。インタビュー先の英会話スクールはこちら
なぜ英会話コーチングの道に進んだの?
英会話じゃなく、コーチング自体に興味がありました。
ライザップのボディメンテ流行りましたけど、なぜあんなに高いのに人気なのか不思議で。そういう仕組みに興味を持ちました。
私は海外生活が長く、英語は特技なので英会話スクール×コーチングという組み合わせはぴったりでしたね。
英会話コーチングって本当に効果あるの?
効果はあります。ただ、数値化するのが難しいです。
英会話の場合、TOEIC、ワーサントみたいな会話力のテストを使って効果を測るとい方法はあり取り入れています。ただし、その点数をそのまま英会話力です、とも言い切れなくて、そこが難しいって感じです。
受講生の成長イメージは?
まずは英会話の基盤として、どんな状況でも相手に伝えたいものは伝えられるようになることを目指します。第一ステップ、どんな状況でもなんとか話せるようになるには1年くらいかかるかなあ。
そこからさらに慣用表現、ナチュラルな表現を身につけていきます。
本当に最初の授業では、スタートラインを明確にすることが重要です。半年後くらいに、動画で過去の自分を見てみて、明らかに成長したのが分かりますね!
コーチ目線で、「日々の成長」を把握するという意味では、毎週プレゼンしてもらっています。前回のレッスン、自宅でのトレーニングの成果が出てるかどうかチェックできますし、毎週チェックポイントがあると、生徒もやる気が出るはずです!
コーチングのおすすめ書籍
コーチングについてもっと知りたいという方へ、まずコーチングに関する書籍を読んでみることをおすすめします。
マンガでやさしくわかるコーチング
CTIジャパン (著), 重松 延寿 (その他)
ストーリー仕立てのマンガと、それに関連する詳細な解説からなる本です。コーチングの概要、基本的な流れ、効果といったコーチングに対する理解と、ストーリーから得られる具体例の組み合わせにより、ビジネスにおけるコーチングの使い方がわかる一冊です。
新 コーチングが人を活かす
鈴木 義幸 (著)
実際に1000社以上の企業に対してコーチングした経験のあるコーチ・エィの社長によって書かれた本です。コーチングとはなんであるかを理解するには最適の入門書です。事例や体験談も豊富に掲載されているので、明日の仕事からすぐに使えるコーチングスキルを習得できます。
コーチング・バイブル(第4版)
ヘンリー キムジーハウス (著), キャレン キムジーハウス (著), フィル サンダール (著), ローラ ウィットワース (著), その他
374ページからなるバイブルの名にふさわしい一冊で、コーチングを本格的に学びた方におすすめの本です。基本的な内容が網羅的に書かれているだけでなく、コーチとしての在り方、考え方、関わり方などベースとなる知識から学ぶことができます。
まとめ
コーチングは問いかけと傾聴という双方向コミュニケーションによって、相手から「答え」を引き出していく目標達成ツールです。模範解答がなく、ビジネスの変化のスピードが速い昨今の事業環境においてはとても有用であるといえるのではないでしょうか。
実際に、コーチングをビジネスの現場で利用する場合、効果がでるまでに時間がかかったり、マネジメントが複雑になることがある一方で、部下とのコミュニケーションがスムースになり、主体的に行動してくれるようになるなど効果は大きいです。
コーチング的な指導を目指される方は、まず、直接的な答えをアドバイスするのではなく、「問題・課題の答えは相手の中に必ずある」と信じて、「なぜ?」「どうしたらいいと思う?」といった問いかけから始めてみてはいかがでしょうか。
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