企業の成長や競争優位性の発揮において重要なのが、新規事業の立ち上げです。新規事業を作り上げるにはベースとなるビジネスアイデアが必要ですが、実際に新規事業の立ち上げに繋がる上質なアイデアを生み出すのは簡単ではありません。
当記事では、新規ビジネスアイデアを生み出すための準備や方法からアイデアを実現するステップまでをご紹介します。上質な新規ビジネスアイデアを生み出すコツを知りたい方や、アイデアが見つからずお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスアイデアとは
ビジネスアイデアとは、新しい商品やサービス、事業のもとになるアイデアのことです。
アイデアはビジネスに限らずあらゆる分野で生まれます。アートの世界では独創性などが評価されるように、分野によってアイデアに求められる要素は異なります。ビジネスの世界において求められるのは、収益性や社会性、持続性があり、事業化して成功を期待できるアイデアです。
新規ビジネスのアイデアを出す下準備
実際に事業化できるような新規ビジネスアイデアは、いざ生み出そうとしてもなかなか思いつかないものです。そこでおすすめしたいのが、新規ビジネスアイデアを出す前に下準備を行うことです。
以下にご紹介するような準備を事前に行うと、情報・思考が整った状態でアイデア出しを行うことができるため、優れたビジネスアイデアを生み出しやすくなります。
これから新規ビジネスアイデアを生み出したいという方は、ぜひ実践してみてください。
作りたい未来を思い描く
ビジネスにはマインドが重要であるとよく言われますが、これは新たなアイデアを出す際にも当てはまります。自社が新規事業で成功した未来を思い描いて、マインドセットが整った状態でアイデア出しを行う場合とそうではない場合では、アウトプットの質も大きく異なってきます。
そのため、新規ビジネスアイデアを出す前には、作りたい未来像を思い描き、社内メンバーで共有しておくことがおすすめです。マインドセットが整うだけでなく考え方の方向性も合わせることができるため、生み出されるビジネスアイデアの質を高めることができます。
立ち上げの目的や要件を整理する
自社が新規事業を立ち上げる目的や新規事業に求める要件を洗い出して整理してみることも重要です。
情報を網羅して整理することで、ある程度要点や焦点が定まってくるため、現実的な新規ビジネスのアイデアを生み出しやすくなります。また、自社が求めていないことも明確化されてくるため、考える方向性がずれることなくアイデア出しの効率も高めることができます。
このように一手間かけるだけで新規ビジネスアイデアに対するアウトプットは大きく変わります。手間を惜しまずにまず実践してみることをおすすめします。
新規ビジネスアイデアを生み出すコツ
新規ビジネスアイデアは偶発的な発想から生まれるイメージを持つ方もいるかもしれませんが、アイデア出しにはいくつかのコツがあります。
ここでは、新規ビジネスアイデアを生み出すコツをご紹介していきます。コツを押さえておくことで、より現実的なビジネスアイデアを生み出しやすくなるため、ぜひ参考にしてください。
不満や課題をもとに考える
多くの人々が悩んでいることや不満に感じていること、抱えている課題が見つかれば、ビジネスアイデアを生み出すチャンスです。
困っている人々は自身の問題を解決したいという欲求が強く、問題を解決する商品・サービスを提供できればそれがビジネスとなる可能性は高いです。
自分自身や周囲の人々が抱えている問題に気づけるよう、普段から広くアンテナを張っておきましょう。
既存のビジネスを組み合わせる
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何物でもない」という、アメリカの実業家ジェームズ・W・ヤングの有名なフレーズがありますが、これはビジネスにおいても当てはまります。
ビジネスアイデアは何もないところから生み出すイメージがあるかもしれませんが、既存のビジネス同士を組み合わせることでも上質なビジネスアイデアを生み出せる可能性は十分にあります。
この方法のメリットは、発想力をさほど必要としない点です。ビジネスを組み合わせるテクニックとセンスさえ磨けば、誰でもビジネスアイデアを生み出すことができます。
新たに作り出したビジネスよりも、既存ビジネスの動向から立ち上げ後の展開をある程度予測できるというメリットもあります。
既存のビジネスに改良を加える
既に成功している既存のビジネスがあれば、改良を加えたり新たな要素を付加したりすることで、より高い価値を提供するビジネスを生み出せる可能性があります。
既にある程度の成功を収めているビジネスを参考にできるため、ビジネスモデルがも確立されていて、成功確度も高いことがこの方法のメリットです。
実際にこの方法で生み出されるビジネスモデルはとても多く、現在トップシェアを誇るビジネスも本来は別のビジネスに改良を加えたものであるケースが多く見られます。
ビジネスアイデアを生み出す際に役立つアイデア発想法については、以下の記事でも詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
アイデア発想法とは
アイデアを生み出すフレームワーク
ビジネスアイデアを効率的に生み出したい場合や、アイデア出しに行き詰まった場合は、フレームワークを活用するのも良い方法です。
ビジネスにおけるフレームワークとは、考え方や意思決定をパターンに落とし込んだ枠組みのことです。目的や用途に合わせて活用することで、スムーズなアウトプットを得ることができます。
ここでは、ビジネスアイデア創出に役立つ代表的なフレームワークを厳選して4つご紹介します。
KJ法
KJ法とは、収集したアイデアを広い視点から分類・整理することで、より良い発想や意見を導き出すアイデア発想フレームワークです。多くのアイデアを生み出すブレインストーミング等の手法と親和性が高く、組み合わせて活用することで高い効果が期待できます。
KJ法の手順は次のとおりです。
- ブレインストーミング等で収集したアイデアをカードに書き出す
- 内容が似ているカード同士をグルーピングする
- 各グループに見出しを付けて、グループ間の関係性を図解化する
- グループごとに文章化する
- 全体を文章化して理解・共有を行う
KJ法は雑多なアイデアをまとめあげて可視化できるため、新規ビジネスアイデアを生み出すのに非常に適したフレームワークです。新規ビジネスアイデアを考案する際にはぜひ活用してみてください。
オズボーンのチェックリスト
オズボーンのチェックリストとは、多角的な視点から問いかけを行うことでアイデアを導き出すフレームワークです。次の9つのチェックリストに従って考えることでさまざまなアイデアを引き出すことができます。
■オズボーンのチェックリスト
- 【転用】ほかに使い道はないか?改善・改良しての使い道はないか?
- 【応用】ほかからアイデアを借りたり真似したりできないか?
- 【変更】色・動き・音・匂い・形・様式・意味等の要素を変えてみたらどうか?
- 【拡大】大きさ・強さ・長さ・厚さ・高さ等を増やしてみてはどうか?
- 【縮小】大きさ・重さ・高さ・長さ等を減らしてみてはどうか?
- 【代用】ほかのものに代用してみてはどうか?
- 【置換】要素・パターン・順序・レイアウト等を入れ替えてみてはどうか?
- 【逆転】上下左右・方向・順序を逆にしてみてはどうか?
- 【結合】要素を合体したり混ぜたり組み合わせたりしてみてはどうか?
マンダラート
マンダラートとは、マス目を埋めていくことで自然にアイデアを拡げることができるアイデア発想フレームワークです。マス目が仏教に登場する曼荼羅模様と似ていることから、「曼荼羅」と「アート」を組み合わせてマンダラートと呼ばれています。
マンダラートの基本的な実施方法は、まず以下のような9マスの中心にメインテーマを書き込み、周辺にメインテーマから連想されるワードを記入します。
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
メインテーマ |
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
続いて、メインテーマから連想されたワードを子テーマとして、同じく周囲に子テーマから連想されるワードを記入していきます。
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
子テーマ |
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
連想されるワード |
子テーマをすべて記入してメインテーマの周辺に並べると、以下のようにメインテーマに関連した合計81マスものアイデアを生み出すことができます。
ブレインストーミング
ブレインストーミング(ブレスト)とは、会議やミーティングの場で頻繁に用いられているアイデア発想法です。別名「集団発想法」とも呼ばれており、特定のテーマと目的を設定して、10名以下のメンバーを集めてアイデアを出し合う方法です。
ブレインストーミングは参加メンバーが自由に発言しても効果がありますが、より良い議論を行うためには次の4つのルールを守って実施することがポイントです。
- アイデアを批判しない
多種多様なアイデアを集めるために、原則としてアイデアの批判をせず自由に発想・発言できる空気を作る - アイデアを組み合わせる
アイデアが集まったら、組み合わせてより良いアイデアが出ないか考える - 質より量を意識する
アイデアを組み合わせるために、質よりも量を意識して発想・発言する - 途中で判断・決断を行わない
議論が止まってしまわないよう、ブレスト中には判断・決断を行わない
ブレストのメリットは、単体でも十分な効果がありますが、ほかのフレームワークと組み合わせることでより効果的なアイデアを生み出せることがある点です。先にご紹介したフレームワークとも容易に組み合わせることができるため、ぜひ実践してみましょう。
新規ビジネスアイデアを実現に移すまでのステップ
新規事業を創出するためには、良いビジネスアイデアを生み出すだけでなく、アイデアを実際にカタチにしていく必要があります。ここでは、新規ビジネスアイデアを実現するための具体的なステップについてご紹介します。
市場調査
良い新規ビジネスアイデアを生み出したら、まず行うべきは市場調査です。現実的な情報を集めて分析を行い、ビジネスとして成立するかを判断する必要があります。
市場調査を行う際には、的確な判断を下せるように、さまざまな調査手法・分析手法を用いて多角的に情報を収集・分析することがポイントとなります。
市場調査の時点でビジネスを成立させる見通しが立たない場合は、思い切って断念して再び新たなアイデアを生み出す段階からやり直す勇気も必要です。
ビジネスモデルを構築する
市場調査を行ってビジネスアイデアを事業化する見通しが立ったら、実際に新規事業を立ち上げるためにビジネスモデルを構築していきます。ビジネスモデルは大まかには次の4つの要素から構成されます。
- Who:誰を顧客とするか
- What:顧客に対してどのような価値を提供するか
- How:どのような方法・手段で価値を提供するのか
- Why:なぜそれが利益を生むのか
新規ビジネスアイデアを深堀りしつつ、自社の強み・弱みや競合など新規事業を取り巻くあらゆる事情を多角的に分析しながら、上記の要素を満たしていきます。ビジネスモデルは新規事業立ち上げの骨組みとなるため、徹底的に突き詰めて構築しておくことが重要です。
ビジネスモデルが完成したら、実際に新規事業を推進するための事業計画を作成します。
事業開始後も改善を続ける
事業計画を精査して実行の判断が下されたら、新規事業のスタートです。新規ビジネスアイデアが実際の事業として具現化される瞬間です。
しかし、事業開始はあくまでスタートに過ぎず、事業を軌道に乗せて安定化させてこそ、本当にアイデアをカタチにできたと言えます。ビジネスの状況は目まぐるしく変化するため、新規事業開始後も、粘り強くPDCAを繰り返しながら推進していく必要があります。
成功するビジネスアイデアを生み出すために必要なこと
冒頭でもふれたように、ビジネスアイデアは事業化して成功が見込めるものである必要があります。そのため、顧客の願望を実現する、または課題を解決する製品・サービスであることは大前提です。解決できる課題の重要性が高い、または実現できる願望が普遍的なものであれば市場のニーズに応えられるということになります。
社会性・収益性・持続性のすべてを達成できるよう、多角的な視点でアイデアを吟味し、それぞれの要素における不足などを解消していくことで、成功するビジネスアイデアを生み出すことができるでしょう。
新規ビジネスのアイデア例
最後に、有名企業が生み出した新規ビジネスのアイデアについて事例をご紹介します。
MeeTruck
MeeTruckは、ソフトバンク株式会社と日本通運株式会社が共同で立ち上げた事業です。荷主と運送業者をつなぐマッチングアプリや、配車管理の支援システムを提供しています。従来は電話やメール、FAXなどで行っていた配車管理をデジタル化したサービスで、現在1000社以上の運送業者が利用しています。
両社が既存のビジネスで蓄積したノウハウや強みを組み合わせて生まれた新規事業の事例です。
SPACEE TAKEOUT
SPACEE TAKEOUTは、株式会社スペイシーが開発したテイクアウト専用アプリです。コロナ禍においてフードデリバリーやテイクアウトの需要が急速に高まりました。フードデリバリーのプラットフォームが普及しましたが、デリバリーサービスは手数料が高く、導入をためらう飲食店も少なくありません。
そういった飲食店のニーズをくみ取り、手数料5%で利用できるテイクアウト専用のアプリが開発されました。注文時に決済されるため、用意した料理が受け取られないといったテイクアウト特有のトラブルも回避できます。
まとめ
企業が成長・拡大するためには、新規ビジネスに取り組み成功させることが重要です。多くの経営者にとって、自社の成長・拡大は共通する願いでしょう。新規ビジネスの成否はビジネスアイデアの質が鍵と言っても過言ではありませんが、上質なアイデアを集めようとしても簡単ではないのが現実です。
今回ご紹介したメソッドを活用することで上質なアイデア創出の可能性を高めることができるため、ビジネスアイデアの創出に課題を抱えている方はぜひお試しください。
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