イノベーター理論とは?キャズム理論との関係や活用方法をわかりやすく解説

 2023.06.09  株式会社システムインテグレータ

新しい製品やサービスを市場に投入する際には、消費者の反応を予測し、適切なマーケティング戦略を立てる必要があります。その際に役立つのが、製品の普及がどのような消費者のあいだで広がっていくのか説明する「イノベーター理論」です。本記事では、イノベーター理論の概要や活用方法についてわかりやすく解説します。

イノベーター理論とは

イノベーター理論とは、新しい製品・サービスが、どのような消費者を経て市場に普及していくのかを説明する理論です。この理論において消費者は以下の5グループに分類されます。

  1. イノベーター
  2. アーリーアダプター
  3. アーリーマジョリティ
  4. レイトマジョリティ
  5. ラガード

詳しくは後述しますが、「イノベーターは新しいもの好き」「レイトマジョリティは新しい技術に慎重」など、各消費者層はそれぞれ異なった特性を持っており、新製品の受容も上記の順番で進んでいく形です。したがって、イノベーター理論に留意しておくと、企業が新しい製品・サービスを市場へ投入する際に、その時々のターゲット層の特徴に応じた戦略を実施しやすくなります。

イノベーター理論とキャズム理論の関係

イノベーター理論を活用する際には、キャズム理論についても理解しておくと、より効果的です。キャズム(Chasm)とは、英語で「広くて深い裂け目」を意味する単語で、アーリーアダプターを経て、アーリーマジョリティへ新製品を受け入れてもらうには大きな壁があることを示しています。

イノベーター理論では、イノベーターとアーリーアダプターまでが初期市場、それ以降が主流の市場に相当する形です。初期市場の消費者は、製品・サービスの目新しさによって惹きつけられるかもしれません。しかし、市場の主流を構成するその他多くの消費者に訴求するには、目新しさよりもむしろ、製品やブランドに対する信頼感や安心感、実用性などが重要です。

そのため、キャズム理論では、新製品を広く市場へ普及させるには、初期市場と主流の市場に対するアプローチは区別して考え、アーリーマジョリティの心を掴むことが重要であると主張されています。

イノベーター理論の5つの分類

新しさを求める「イノベーター」

イノベーターは、最先端の技術や新しい製品・サービスへ非常に強い関心を持っており、革新的な商品が市場に登場したとき、最も早く受容する消費者層です。イノベーター理論では市場の2.5%を占めると考えられます。

流行を察知する「アーリーアダプター」

アーリーアダプターは、世間や業界におけるトレンドの兆しに敏感で、比較的前向きに新しい製品・サービスを受け入れてくれる消費者層です。ただし、彼らは目新しさだけでなく、「メリット」や「可能性」なども加味して製品・サービスを選択する傾向があります。市場での割合としては、市場の13.5%を占める消費者層です。

流行に乗りたい「アーリーマジョリティ」

初期市場の先にあるキャズムを飛び越え、メインストリーム市場への入り口で待っているのがアーリーマジョリティです。この消費者層は、「世間で話題になっている」「インフルエンサーが使用している」など、世間で巻き起こった流行を後追いする形で、製品・サービスを受容する層です。彼らにとっては「多くの人が利用している」ことが重要な判断基準になります。市場の34%を占めるのがこの消費者層です。

慎重に選ぶ「レイトマジョリティ」

アーリーマジョリティの多くが製品を導入した後、周囲や世間での評価を慎重に見極めた後で、商品・サービスの導入を検討し始めるのがレイトマジョリティです。この消費者層は流行や新しさには関心を示さず、リスクの少ない信頼できる製品、実用的な製品を好む傾向があります。市場での割合は34%です。

流行に全く興味がない「ラガード」

イノベーターからレイトマジョリティまで、市場の80%以上が新しい製品・サービスを導入した後に残るのが、ラガードと呼ばれる消費者層です。ラガードは新しいことにはまったく無関心で、伝統や文化を重んじます。慣れ親しんだ製品・サービスから離れることは、ラガードにとって強い抵抗感のあることです。ラガードは市場の16%を占めます。

イノベーター理論の活用方法

上記で見てきたように、新しい製品・サービスを市場に普及するための各段階では、それぞれ異なった特徴や傾向を持った消費者層と相対することになります。そのため、市場に対してアプローチする際は、そのときにどの消費者層を対象にしているのか意識することが重要です。そこで以下では、各消費者層に対して、どのようなアプローチをすべきかを解説します。

イノベーターを対象とした場合

新しいことへの好奇心が旺盛なイノベーターに対しては、新しい技術や革新的な機能などを強調したアプローチを仕掛けるのが効果的です。彼らは、最新情報の収集にも精力的な傾向があるので、SNSやWebサイトでのプレスリリースをキャッチしてくれると期待できます。また、商品紹介のWebコンテンツなども効果的です。

アーリーアダプターを対象とした場合

流行の先駆者になりたい傾向が強いアーリーアダプターは、「トレンドになりそうか」、「既存の製品と比較してどうか」などを重視します。そのため、広告・宣伝では、製品・サービスの具体的なメリットや従来型からの改善点を入れると効果的です。

また、オピニオンリーダーとしての性質を持つアーリーアダプターは、自ら積極的に口コミやレビューを広げる傾向があります。そのため、アーリーアダプターにレビューの作成などを促す施策を講じることは、アーリーマジョリティ以降の消費者層へアプローチするための布石にもなる重要な試みです。

アーリーマジョリティを対象とした場合

流行に敏感なアーリーマジョリティには、すでにその製品・サービスが流行していることを強調し、「流行に乗り遅れる恐怖」を喚起することがポイントになります。彼らは話題性や誰が情報発信しているかを重視するので、芸能人やブロガー、動画配信者といったインフルエンサーに働きかけて製品・サービスのアピールをするのが効果的です。

レイトマジョリティを対象とした場合

流行への関心が薄いレイトマジョリティは、新しい製品・サービスが市場に広く浸透し、市場における立ち位置や評価が確立してから製品の導入を検討する傾向が強いです。こうした慎重なレイトマジョリティに対しては、Webサイトや広告などで普及率やユーザーからの高評価をアピールするなどして、安心感を強調することが役立ちます。

ラガードを対象とした場合

ラガードは新しいものに対する抵抗感が強いので、まずはWeb広告などを通して製品・サービスの認知度を高め、親しみを持ってもらえるようにすることが重要です。すでに該当の製品・サービスは市場に定着しており、多くの人が利用していることを示すデータを提示することで、ラガードへ安心感を与えられます。製品に目新しさがあるうちはラガードに対して積極的にアプローチしても空振りに終わるリスクが高いので、まずは世間の定番レベルまで製品を浸透させることが先決です。

まとめ

イノベーター理論を基に、自社の新しい製品・サービスが今どのような消費者層に受け入れられている段階か分析することで、その時々の状況に応じた最適なマーケティング戦略を実施しやすくなります。

市場へのアプローチ方法も含め、新規ビジネスを成功させるには質と量を兼ね備えたアイデア出しが不可欠です。以下の資料には、ビジネスでアイデアを出す上で避けたい「あるある」の失敗事例や、新規ビジネスのアイデアを考える際のヒントがまとめられています。ぜひ参考にご覧ください。

アイデア出しで避けたい「あるある」7選と新規ビジネス発想術

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