現代社会において、企業の成長や業界・市場の活性化のためにはイノベーションが必要不可欠であると言われています。ビジネスに携わる多くの方々には一般的なワードですが、イノベーションの定義や種類といった詳細まではわからないという方もいるのではないでしょうか。
当記事では、イノベーションの概要と定義から、イノベーションの種類、具体的な成功事例、実現における課題点までをご紹介していきます。
イノベーションについて理解を深めたい方や、今後自社でイノベーションを画策したいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
イノベーションとは
イノベーションとは、革新的なモノ・サービス・システム・ビジネスモデル・組織などによって、従来の常識が覆されるような新たな価値を生み出し、社会全体に大きな革新や変革をもたらすことです。
現代社会では多くの業界・業種において市場の成熟による飽和や停滞を招いています。そこで、イノベーションを引き起こして現状を打破することは、これからの企業にとって重要な経営課題であるとして注目されています。
イノベーションには、大きく分けて次の2つのタイプに分類されます。
- クローズドイノベーション
研究・開発・製造まで自社内の資源のみで行い、新たな価値を創造するイノベーション - オープンイノベーション
社外の組織・機関から知識・技術・ノウハウを取り込んで新たな価値を創造するイノベーション
90年代以前の日本社会では、多くの企業がクローズドイノベーションによって成功を収めてきた実績があります。しかし、時代の変化とともにクローズドイノベーションでは十分な競争力を発揮できなくなってきています。
海外ではオープンイノベーションによる成功事例が目立ち始めてきたことから、日本国内にもその流れに乗る企業が増えており、現代におけるイノベーションの主流はオープンイノベーションに変わりつつあります。
イノベーションが注目される背景
そもそも、なぜイノベーションが注目されるようになったのでしょうか。イノベーションを必要とする理由は企業によって異なりますが、その背景には主に以下の3つが挙げられます。
技術革新の加速化
近年、AI・IoTや電気自動車など急速かつ飛躍的に技術が発展しています。主流となる技術や手法が急激に変化するなか、企業の競争力を高めるためにはイノベーションによって商品・サービスに新しい付加価値を与える必要があります。
市場の飽和と競争激化
市場の飽和や競争の激化によって従来の戦略が通用しなくなっている今、イノベーションによって新しい価値を創造する必要があります。市場における優位性の獲得、または新しい市場のすることは企業や事業の存続に関わる重要課題です。
労働力不足
少子高齢化による人手不足が慢性化・深刻化するなかで、生産性の向上は企業にとって喫緊の課題です。イノベーションによって業務のプロセスや仕組みを革新し、業務の効率化・最適化や省人化を図る必要性が高まっています。
5種類のイノベーションとその定義
イノベーションは上述のとおり新たな変革によって価値を生み出すことを意味するワードですが、現代においては主に5つの種類に分けて定義されています。
ここでは、各イノベーションの定義・概要・特徴についてご紹介していきます。現代におけるイノベーションについての理解を深めるためにも、ぜひ確認しておいてください。
プロダクトイノベーション
プロダクトイノベーションとは、これまでになかった新しい製品やサービス(プロダクト)を生み出すことで、新たな価値を創出するイノベーションです。数あるイノベーションの種類のなかでも、最もインパクトが大きくわかりやすいタイプのイノベーションといえます。
過去に起こった大きなプロダクトイノベーションには、テレビや冷蔵庫といった家電製品、自動車、パソコン、インターネット、スマートフォンなどが挙げられます。これらは瞬く間に人々の生活に普及して、ライフスタイルそのものを激変させました。
プロダクトイノベーションは、まったく新しいプロダクトを誕生させるだけでなく、既存のプロダクトの組み合わせや改善によっても生み出されることがあります。
詳しくは以下の記事でご紹介していますので併せてご覧ください。
プロダクトイノベーションとは?事例や実践手法について解説
プロセスイノベーション
プロセスイノベーションとは、プロダクトの製造方法や製造工程などプロセスを革新的な仕組みへと作り変えるイノベーションです。生産性向上やコスト削減といった自社内のメリットだけでなく、良い商品を低価格で効率的に提供できるようになるといったメリットが期待できます。
プロセスイノベーションの代表的な事例としては、1913年に自動車メーカー「フォード」がベルトコンベアの導入によって自動車の大量生産・低価格化を実現した例が有名です。
現代社会においては、ITツールの導入・活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)によるプロセスイノベーションが挙げられるでしょう。
詳しくは以下の記事でご紹介していますので併せてご覧ください。
プロセスイノベーションとは?意味や効果、事例を解説
マーケットイノベーション
マーケットイノベーションとは、新たな市場に参入することで、これまでになかった販路や消費者を開拓して顧客獲得を目指すイノベーションです。自社の製品・サービスに、主軸は残しつつ新たな魅力や価値を付加して、未知のマーケットにアプローチします。
ゲーム業界が、家庭用ゲーム機からスマホユーザーを対象としたゲームをリリースして巨大なマーケットを形成していることなどはわかりやすい例でしょう。
マーケットイノベーションはほかのイノベーションのような大きな変化やコスト投下を必要としないケースも多いため、企業規模・業界・業種に関わらず実現可能性が高いイノベーションといえます。
サプライチェーンイノベーション
サプライチェーンイノベーションとは、プロダクトの原材料・供給ルート・在庫管理・配送といった製品製造から消費者への提供までの流れを改革するイノベーションです。
プロダクトが優秀でも、安定した原材料の供給やコスト高騰といった理由により、生産が不安定となったり利益の確保が難しくなったりするケースがあります。このような企業においては、原材料の供給減の開拓、別材料への変更、流通ルートの効率化などを行うことで、大幅な改善が期待できます。
表面からはわかりにくい地味なイノベーションとなりますが、成功すれば経営上のメリットが大きいことがサプライチェーンイノベーションの特徴です。
オーガニゼーションイノベーション
オーガニゼーションイノベーションとは、企業の組織自体を変革・再構築して、自社ならびに業界・社会へ影響を与えることを目指すイノベーションです。例えば、次のような方法が挙げられます。
- トップダウン組織からボトムアップ組織等への変革
- 社内ベンチャー制度の採用
- フランチャイズシステム等の導入
従来の組織体系では事業が伸び悩む場合や時代の変化に対応できない場合において、大きな成果が期待できるとされています。
破壊的イノベーションと持続的イノベーション
イノベーションは、上記でご紹介した定義とは別に、業界やビジネスモデルに与える影響によって分類されることもあります。
ここでは、破壊的イノベーション・持続的イノベーションという2種類のイノベーションと、これらに関連する「イノベーションのジレンマ」についてご紹介します。
「イノベーションのジレンマ」とは
イノベーションのジレンマとは、業界でシェアを獲得した企業が、既存の顧客ニーズばかりに着目して製品・サービスの強化や充実に注力するあまり、イノベーションによって台頭した新興企業にシェアを奪われてしまう現象のことです。
既に一定のシェア・評価を獲得している企業ほど、既存顧客のニーズに応える必要性が高くなり、大企業ほどイノベーションのジレンマに陥りやすい傾向にあります。大企業は後述する持続的イノベーションを選択しやすい傾向にあることも、イノベーションのジレンマに陥りやすい理由として挙げられます。
破壊的イノベーション
破壊的イノベーションとは、市場バランスが根底から覆され、既存企業の市場シェアが破壊されるほどの革新的なイノベーションのことをいいます。
破壊的イノベーションには、既存の製品・サービスよりも低価格でより良い製品を投下するローエンド型破壊的イノベーションと、圧倒的な技術革新によって誕生した優れた製品・サービスを新たな市場に投入する新市場型破壊的イノベーションがあります。
多くの市場は成熟して既に飽和状態となりつつあるため、今後企業が成長していくためには、企業規模を問わず破壊的イノベーションを起こすことが必要と言われています。
持続的イノベーション
持続的イノベーションとは、顧客ニーズを満たすために、自社の製品・サービスの性能向上ならびに製造プロセスを向上させるイノベーションのことです。上述の破壊的イノベーションの対義語として用いられるワードです。
持続的イノベーションは、市場で長期的にシェアを確保するための生存戦略としての意味合いを持ちます。市場が形成された製品・サービスは、参入企業によって性能・品質を高める競争が繰り広げられるため、継続的に向上を図らなければシェアを奪われ顧客を失ってしまいます。
一定の成功を収めた企業にとっては必須ともいえる戦略となりますが、あまり盲目的になりすぎると先にご紹介したイノベーションのジレンマを引き起こす原因となります。
イノベーションに成功した事例
イノベーションについて理解を深めるには、言葉の定義や理論を知るだけではなく、実際の成功事例をたくさんチェックすることがおすすめです。イノベーションの推進をイメージできることはもちろん、成功の鍵となった要因や打ち手などさまざまなことを学ぶことができます。
ここでは、「iPhone」「ZOZO SUIT」「リブセンス」という私たちの身近に存在する3つのイノベーション成功事例をご紹介します。
iPhone
プロダクトイノベーションの代表的な事例が、2007年に発売されたAppleのiPhoneです。スマートフォンを提供している企業はApple以外にもありますが、洗練されたデザインとアイデアによって現在も日本のスマートフォン市場ではトップシェアを誇っています。
Appleは、物理的なボタンを極力排除して、プッシュ操作ではなく指でタップする直感的な操作を実現。現在ではガラケーと呼ばれている従来の携帯電話とはデザイン・操作性などがまったく異なる画期的なデバイスを開発することで、瞬く間にシェアを拡大しました。
スマートフォンの爆発的な普及には、Apple社のiPhoneの存在が大きく影響したといえます。
Apple社の、良い製品を作るためには妥協を許さず徹底的に議論を繰り返す姿勢は、イノベーションを実現したいと考えるすべての企業の手本になるでしょう。
ZOZO SUIT
ZOZO SUITは、アパレルECサイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZOがリリースした、採寸用ボディースーツです。
アパレル系通販でユーザーが最も困っていたのは、自分に合った正確なサイズがわからない点でした。サイズ表記があってもメーカーやブランドによって差異があるため、自分に合わないサイズを購入したり判断に迷ったりしてしまうケースが頻繁に発生します。この問題を解決するためにZOZO SUITは誕生しました。
ZOZO SUITは、マーカーが印刷された上下揃いのボディースーツで、着用して全身をスマートフォンで撮影することにより、全身の寸法をデータ化できるというものです。ユーザーは、オンラインで服を購入する際に自分のサイズに合ったアイテムを選ぶことができます。
提供企業側にも、大量の顧客データの収集や採寸データからの正確なレコメンドが可能になるといったメリットが期待できます。
ZOZO SUITは2017年11月に送料のみの負担で提供がスタートしましたが、予約が殺到してものの数日で数カ月待ちの状態となるなど、大きな話題になりました。
成果報酬型の求人サイト(リブセンス)
株式会社リブセンスは2006年にオープンした求人サイトに、採用が決定してから掲載料を支払うという成功報酬型の仕組みを業界で初めて取り入れたことで注目を集めました。
従来の求人サイトや転職サイトといった求人媒体では、企業が事前に掲載量を支払うことで求人広告を掲載する仕組みでした。
しかし、この方式だと想定していたよりも反響が少なかった場合は投下したコストに見合うリターンが得られないため、企業側としては安易に求人を出せず、媒体側も集客に苦労していた実情があります。
リブセンスは、求人を出したい企業側のリスクを払拭するというイノベーションを起こすことで、求人広告を利用する企業にも自社にもメリットのあるサービスを生み出し、業界に変革をもたらしたといえます。
日本企業のイノベーション創出における課題点
イノベーションは企業だけでなく業界・社会に対して新たな価値や影響を与えることができますが、イノベーション創出にはクリアしなければならない課題もあります。
ここでは、日本企業に多く見られる傾向を踏まえて、イノベーション創出における課題点について解説します。
短期で成果をあげようとする取り組みが多い
イノベーションの実現には芽が出るまである程度の期間が必要となる場合が少なくありません。また、短期的に見るとコストやリソースの無駄が多く、長期的視点で取り組んだ方がよいケースもあります。数多くのイノベーションの失敗事例を見てみると、全体的に短期で成果をあげようとする取り組みが目立ちます。
このような現象が起こる理由としては、市場の変化が激しく事業寿命が短くなってきたことや、本業と切り離してイノベーションに投下する時間・コスト・リソースを確保するのが難しいことが挙げられます。
企業がイノベーションを起こす重要性・必要性は高まっており、早く成果が欲しいという意図はわかりますが、大きな変化を起こしてイノベーションを成功させるには、相応のエネルギーと時間が必要であることを認識しておくことも必要でしょう。
新たな発想が生まれにくい
イノベーションを起こすようなアイデアは、常識や日常から逸脱したような行動・発言・発想や遊び心から生まれるケースが多くあります。
しかし、日本社会の企業は常識やしきたりを重視する傾向が強く、人材の流動性・多様性も低いため、イノベーションに繋がるような発想が起こりにくい環境だと言われています。
特に、古い体質の会社や大企業ではこのような傾向が強く、変化やルールから外れることを嫌うため、新興のベンチャー企業よりもイノベーションが起こりにくい状況にあります。
日本企業が持つこのような体質は良い側面もありますが、イノベーションを起こすことを目指す場合には、組織・風土に柔軟性を持たせることも必要となってくるでしょう。
クローズドイノベーションに陥りがち
イノベーションには、すべてを自社で内製するクローズドイノベーションと、積極的に外部の力を借りるオープンイノベーションがあります。日本企業には根強い自前主義があり、過去に革新的な製品・サービスをリリースした実績の多くもクローズドイノベーションであることから、現代においてもクローズドイノベーションに偏りがちとなっています。
クローズドイノベーションであれば、自社の情報を秘匿しつつ競争優位性を発揮できるというメリットがありますが、コスト・時間・リソースが高騰するというデメリットもあります。しかし、変化の激しさや事業寿命の短命化、競争激化といった状況下にある現代においては、クローズドイノベーションは適さなくなっていることが実状です。
オープンイノベーションの方が成功確率を高められるケースも少なくないため、これからの日本企業は自前主義に固執せず、柔軟な取り組みを行うことも必要となってくるでしょう。
経営層の意識変革が必要
漠然と事業を行っていては、イノベーションを引き起こすことはできません。また、従来の日本企業にありがちな、枠に捉われた組織体質やコミュニケーションの流れは、イノベーションの妨げとなることが多くあります。
そのため、イノベーションを起こしたいと考えるのであれば、まず企業の意思決定者である経営層が意識改革を行い、自社をイノベーションが起こりやすい体質へと振り向けて行くことが必要です。
具体的には、次のようなポイントが重要となります。
- 経営層と現場の意思疎通・コミュニケーションの活性化
- 経営層が顧客目線の現場の意見を積極的に拾う
- 新しいチャレンジや発言に対する障壁を取り除く
社内に大きな影響力を与えることができるのは経営層です。イノベーションを起こしたいのであれば、経営層の意識改革・行動変容から始めていきましょう。
イノベーションの成功に必要なこと
イノベーションを起こして成功した企業は、ほかの企業と何が違うのでしょうか。最後に、成功するイノベーションの創出に必要な要素を紹介します。
市場や時代の変化をとらえる情報感度
イノベーションにはさまざまな種類がありますが、どのようなイノベーションであってもニーズをとらえられていなければ成功は期待できません。市場や時代の変化を敏感に察知し、新しい価値をもたらす製品・サービスが市場に受け入れられるか見極める必要があります。
リスクへの理解と適切な対策
イノベーションには常に不確実性とリスクが伴います。新しい製品・サービスを市場に出した場合のリスクが高いとして先行投資をやめてしまえば、他社に出遅れてシェアの獲得が難しくなる可能性があります。場合によっては既存事業にも大きな影響を与えるかもしれません。イノベーションの創出においてはリスクをしっかりと理解し、適切な対策を練る必要があります。
イノベーションを起こしやすい環境
イノベーションを起こすためには、逆境やストレスに耐えられるレジリエンスの高さが重要です。新しい価値を市場にもたらすにあたっては多くの課題があります。そのため、チャレンジ精神を持った人材や文化、その挑戦を支援する体制や環境が求められます。
まとめ
イノベーションは、成熟・飽和した市場に旋風を巻き起こし、企業が大きく飛躍するチャンスをもたらす可能性を秘めています。今後は企業規模を問わず、いかにイノベーションを引き起こせるかが今後の企業の命運を分けると言っても過言ではないでしょう。
イノベーションを起こすには、質の高いビジネスアイデアが必要不可欠です。しかし、実際にアイデアを集めようとしても、良いアイデアが出てこなかったり数が集まらなかったりといった課題に直面します。
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