4P分析とは?基礎知識や分析プロセス、戦略設計、事例を解説

 2023.01.30  株式会社システムインテグレータ

ユーザーのニーズを満たす価値を生み出すために、分析を行い、戦略を考えるマーケティング活動ではさまざまな手法が使われます。その一つが「4P分析」です。この4P分析を理解してマーケティングに用いれば、有利に戦略や施策の立案・分析を行えます。

本記事では4P分析についてわかりやすく解説します。4P分析の基礎知識だけでなく、具体的な分析プロセスや戦略設計、成功事例についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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4P分析とは

4P分析とは

4P分析は、マーケティングの戦略構築などで用いられるフレームワークの一種です。1960年にエドモンド・ジェローム・マッカーシー氏によって提唱されました。「4P」は、マーケティングをするうえで重要な4つの要素「Product(製品やサービス)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)」の頭文字を取っています。

上記4Pの「どんなものを・いくらで・どこで・どうやって販売するか」という視点は、マーケティング戦略の立案のみならず、分析や施策の立案でも欠かせません。市場や消費者などの環境を分析し、自社製品の強みを明確にする際に有効な手段として、4P分析は広く活用されています。

4P分析のほかにも、ビジネスで役立つフレームワークは数多く存在します。以下でわかりやすく解説を行っているので、ぜひ参考にしてみてください。
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4P分析と4C分析の違い

4P分析と似たフレームワークに、4C分析があります。主な違いは、4P分析が企業視点であるのに対し、4C分析は顧客視点である点です。マーケティング戦略が、生産志向→販売志向→顧客志向と変化してきたなかで、1993年に経済学者ロバート・ラウターボーン氏が4C分析を提唱しました。

4P分析と4C分析で用いる4つの分析要素はそれぞれ以下のとおりです。

4P分析 4C分析
Product(製品やサービス) Customer Value(価値)
Price(価格) Customer Cost(コスト)
Place(流通) Convenience(利便性)
Promotion(販促) Communication(コミュニケーション)
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4P分析の「4つのP」と分析プロセス

マーケティング戦略を立てる際は、環境分析→基本戦略→具体的施策の検討、といった流れでアプローチするのが一般的です。それぞれのステップでは以下のような分析や検討を行います。

  • 環境分析:マクロ環境、ミクロ環境、戦略分析
  • 基本戦略:KSF設定、マーケティング戦略
  • 具体的施策:マーケティング施策

4P分析が使われるのは具体的施策を立案する3つ目の段階です。それでは、4P分析の「4つのP」について詳しく見ていきましょう。

Product:製品やサービス

Productでは、ユーザーにどういった製品やサービスを提供するかを立案します。ユーザーが求めている要素を調査することで、購入を検討してもらえるきっかけ作りに役立てます。具体的には、パッケージデザイン・配色・アフターサービス・保証の内容など、製品やサービスを構成する要素が挙げられます。

また、他社製品との比較も重要です。競合と比べてどこが優れどこが劣っているのか、ユーザーに評価されている点などを分析します。その後、競合と差別化できるポイントや強みを踏まえたうえで、コンセプトを考えるとよいでしょう。

Price:価格

Priceでは、利益・需要・競合の3つの視点から考えます。

4p-analysis

1つ目の利益は、どの程度利益を確保したいかという視点です。価格設定の基本的な考え方である「価格=コスト+利益」という捉え方を用いて、具体的な数字を算出してみましょう。

2つ目の需要は、設定した価格に対する市場のニーズです。もし、高額な価格設定をしたなら、価格に見合う価値が求められます。設定した価格と品質で、ユーザーのニーズを満たせるかを検討しましょう。

3つ目の競合は、ライバルの価格を参考にする視点です。競合に対し価格で勝負するのか、商品の品質で勝負するのかなど、方向性を決めましょう。

Place:流通

Placeは、製品やサービスを円滑にユーザーへ提供するための販売場所や流通経路を指します。実際に商品の販売を開始する際、製品やターゲットなどに合わせて販売方法を考えなければなりません。ユーザーのニーズにマッチした商品でも、販売場所や提供方法が不適切だと、販売の機会を失ってしまいます。そのため、売る場所・在庫管理・配送方法・販売地域の決定などを明確にしましょう。

また、テレビ・メール・電話などユーザーにアプローチする、またはユーザーが相談・問い合わせできる伝達手段をしっかりと確保することも有効です。これらを踏まえ、商品の性質やターゲット層を考慮して、流通を検討しましょう。

Promotion:販促

Promotionでは、自社商品の認知を広げて、販売を促進する手法を検討します。

まず、情報を確実にターゲット層に届けるため、発信するメディアや市場に伝達する情報、そしてプロモーション方法を考えましょう。この際、自社の強み・ユーザーへの訴求・ポジショニングの訴求といった3つの視点から整理すると効果的な販促の方向性が見えてきます。

販促で訴求する内容は、自社の強みやライバル企業との違いといった差別化ポイントが中心です。加えて、自社の商品はどういった課題の解決に結びつくのかを詳しく伝えるとよいでしょう。例えば、スマートフォンを宣伝する場合は、高性能なスペックの数値情報だけでなく、実際の利用シーンやユーザーのメリットを明確に訴求することが重要です。

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サービス業の場合は「7P」が有効

サービス業の場合は「7P」が有効

サービス業の場合は、「7P」というフレームワークを活用した分析が効果的です。7Pとは、4Pに加えて、People(人)・Process(プロセス)・Physical Evidence(物的証拠)の3つを追加した分析手法で、経済学者のフィリップ・コトラー氏によって提唱されました。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

People:人

Peopleは、従業員やユーザー、関係会社など、製品やサービスの提供で関連する人物を指します。人という視点を軽視してサービスを提供してしまうと、ユーザーを充分に満足させられません。極端な例ですが、夜景も綺麗で最上級の料理も楽しめる一流のレストランであったとしても、ユーザーをもてなす従業員の態度が悪かったら、ユーザーが感じる価値は下がってしまいます。

ユーザーに提供する製品や、サービスの価値を向上させるためには、関連する人物も重要な要素として考えましょう。

Process:プロセス

Processは、製品やサービスをユーザーに提供する過程を指します。ユーザーに製品やサービスが届くまでのステップを効率良く快適な環境になるよう構築しなくてはなりません。

例えば、提供までに時間がかかるファーストフード店があるとします。この「時間がかかる」という問題を解決するには、効率化を考え人員やカウンターの配置を工夫して改善する必要があるでしょう。

ほかにも、待ち時間を活かしてユーザーの新たな体験創出に利用することも可能です。例えば、レストランであればオープンキッチンにして調理の過程を覗けるようにすれば、ユーザーの付加価値を向上させられます。

Processでは、効率化ばかりに気を取られてしまいますが、ユーザー体験の視点も忘れずに持っておきましょう。

Physical Evidence:物的証拠

Physical Evidenceは、物的証拠を意味し、サービスを提供する際の演出となるツール・装飾などを指します。具体的には、店舗の外装・BGM・推薦状・トレーサビリティ表示などが、Physical Evidenceに該当します。

サービス業の場合、提供している商品が目に見えない、消えてなくなるといった特性があります。そのため、ユーザーが安心して利用できるようなPhysical Evidenceが必要になるのです。

例えば、予備校の教師の指導力は目には見えませんが、ユーザーに品質を保証するために合格者数を目立つように掲示しています。このように、目に見えない実績や機能を宣伝する際は、その商品やサービスがどれほど魅力的であるかをユーザーに伝えられるよう手段や内容を検討しましょう。

4P分析を活用したマーケティング戦略立案のポイント

4P分析を活用したマーケティング戦略立案のポイント

マーケティング戦略の立案を成功させるには、4P分析をどのように活用すれば効果的なのでしょうか。4P分析の効果を高めるために意識しておきたいポイントを2点ご紹介します。

4Pを統合して考える

4つのPが、それぞれバラバラの状態では効果を充分に発揮しません。まずは、4Pを統合して考えることを必ず意識しましょう。具体的には製品やサービスはもちろん、価格・流通・販促のすべてが連動していて、整合性が取れた状態にする必要があります。例えば、お得感を出したいのに値段の設定が高かったり、若者がターゲットなのにSNSに連動していなかったりすると、4Pの整合性が取れていないということになります。

そのほか、4Pを統合して考えられない原因として挙げられるのが、それぞれの要素を考える部署や人が異なっているケースです。特に、大企業ではそのような傾向があるため、4Pのコンセプトをいかに組織で共有できるかが重要になります。

顧客側の視点を補う「4C分析」も活用する

4P分析は主に企業側の視点から分析するフレームワークです。これに対して顧客の視点から分析する「4C分析」があります。従来は4P分析が主流でしたが、近年は顧客ニーズの変化に伴い4C分析に移行しつつあると言われています。プロダクト重視の時代から顧客視点重視の時代になり、4P分析のみで効果的なマーケティング戦略を立てるには限界があるためです。

例えば、いくら美味しいコンビニスイーツ(価値)でも、食べるのに手間が掛かる(利便性)場合、ユーザーに選んでもらえないかもしれません。ほかにも、コスト削減を意識する企業がサポートデスクを縮小してユーザーの利便性を低下させてしまっては本末転倒です。このように4C分析を行うと、4P分析だけでは見落とされがちな顧客視点に気付けます。

4P分析の実例「セブンカフェ」

4P分析の実例「セブンカフェ」

セブンカフェは、セブンイレブンが2013年からスタートした淹れたてのコーヒーを楽しめるサービスです。本格的なドリップコーヒーを110円から楽しめるサービスは大ヒットし、コンビニのコーヒーは私たちの生活に定着しています。ここでは、セブンイレブンのコーヒーを、4P分析の視点から見ていきましょう。

Productにおける成功

セブンカフェにおけるProductは、上質なドリップコーヒーです。ユーザーはセブンカフェを利用すれば、手軽に淹れたてのコーヒーをいつでも楽しめるようになりました。また、コーヒーにもさまざまな種類が用意されており、アイス・ホット・カフェラテなどその日の気分で選べます。

こうしたサービスの成功には、マシン開発やコーヒー豆の調達、紙コップやアイスコーヒー用の氷の選定など、細部のこだわりが影響します。さまざまな企業とチームを組むことで、理想のプロダクトを実現したのです。

Priceにおける成功

セブンカフェにおけるPriceは、価格の安さです。セブンカフェのアイスコーヒーは、レギュラーサイズで税込110円(※記事作成時点)と、本格ドリップコーヒーとしては非常に安く、コーヒー業界に大きなインパクトを与えました。低価格コーヒーの実現に至ったポイントは、セルフサービスです。ユーザーが自らコーヒーマシンを操作して淹れることで、人件費を削減しています。加えて、手頃な価格のコーヒーの提供によって、ほかの商品とのあわせ買いも促進されました。コーヒー目当てのユーザーが店舗に流入し、店舗全体の売上アップに大いに貢献したのです。

Placeにおける成功

セブンカフェにおけるPlaceは、日本中のセブンイレブン店舗です。セブンイレブンは、家の近所や勤め先の周辺、都市部から郊外まで、さまざまな場所に出店しています。このように、数多くの販売チャネルを張り巡らしているコンビニとセブンカフェの相性の良さは抜群です。

また、食品や日用品の購入、仕事の合間、遊びの待ち時間、ドライブなど、ユーザーがコーヒーを求めるタイミングを逃しません。加えて、会計時は空の紙コップを渡すだけなので、店員がレジ作業を止めることなくスムーズに商品を提供できる仕組みも、顧客が定着する理由となっています。

Promotionにおける成功

セブンイレブンは以前からさまざまな戦略でプロモーションを行ってきました。セブンカフェのPromotionにおいても、TVCMやYouTubeの動画広告のほか、会社ロゴにあわせたセブンカフェのロゴデザインによるブランド強化、nanacoカード会員・アプリ会員向けの特典やイベントに合わせたキャンペーンの実施、あわせ買いの促進など、多種多様な戦略で新規・リピート客の獲得に成功しています。

まとめ

4P分析はマーケティング戦略を立案し実行する過程で用いられるメジャーなフレームワークです。

4P分析を活用して、優れたマーケティング戦略を生み出している企業は少なくありません。Product(製品やサービス)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)の4つの視点から分析を行えれば、自社製品の特徴を明確にできます。特に、新規事業の立ち上げを検討する際には、4P分析以外にも、さまざまな思考法やフレームワークが用いられるでしょう。それぞれに適した使い方で、事業の成功につなげましょう。

4P分析のほか、新規事業のアイデア発想に役立つ情報をまとめた資料をご用意しております。ぜひこちらもご覧ください。

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