事例から学ぶ!ERPをクラウド(AWS)で構築するメリットとは?

 2021.11.25  株式会社システムインテグレータ

日本のERP黎明期といわれる1990年代初頭は通信インフラがいまほど発達していなかったことから、オンプレミス型のERPが主流でしたが、昨今はネットワーク環境が整ってきたことや、顧客ニーズが「所有」から「利用」にシフトしてきたことから、クラウドERPが一気に普及してきました。

今回は、グローバルシェアNo.1のAWS(Amazon Web Services)クラウドでERPを構築するメリットを解説するとともに、AWSを使ってクラウドERPを実際に運用しているお客様の生の声もご紹介します。

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AWSクラウドでERPを構築するメリット

ERPをAWSクラウド上で構築するメリットは、オンプレミスにはない数々のメリットが存在します。このメリットこそ多くの企業がAWSへ移行している理由でもあるのです。

AWSを利用するメリットについて大きく3つに絞りご説明いたします。

  1. 適時性・俊敏性が高い
  2. 拡張性・柔軟性が高い(リソースの増減が容易)
  3. 最先端の技術をいつでも利用可能

AWSのメリットその① 適時性・俊敏性が高い

オンプレミスでの IT リソースの導入は、減価償却期間として定められた期間の利用を続けることが前提であることから、高額な初期費用、緻密なキャパシティ・プランニングなどの計画が必要でした。

また、サーバを発注後、納品までに数週間以上を要し、納品後はエンジニアがデータセンターへの取り付け作業、ネットワーク設定、OS やミドルウェアのインストールなどを行う必要があり、サービス稼働までに多くの時間と労力を要し、さらに契約書や見積書、注文書などのやり取りも求められました。AWS では、管理者画面や API 経由の操作により、初期費用なし、わずか数分で IT リソースの用意が可能となります。 

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AWSのメリットその② 拡張性・柔軟性が高い(リソースの増減が容易)

柔軟にITリソースを調達可能

必要なときに数クリック、数分間でサーバの台数の増減が可能です。また今稼働しているサーバの CPU やメモリ、ストレージのサイズを変更することも可能です。これにより、たとえば日中と夜間で稼働しているサーバのスペックを変更することや、夜間や週末にサーバを停止して利用料を削減することもできます。また繁忙期にサーバのリソースを短期的に増強させることが可能であり、利用されていない IT リソースの維持コストは発生しません。

オンプレミスでシステムを準備する場合、常にユーザー数の増加を予測し、その予測を上回る IT リソースを確保している必要がありました。AWS では必要なときに IT リソースを強化することにより、コストを節約することができます。

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ピークに応じた動的 IT リソースの変更を自動化

現行のサーバリソース状態を監視し、あらかじめ定められた閾値を超過した場合に自動でサーバリソースが増強される、といったことが実現できます。これにより、ビジネスの機会損失を防ぐことができます。 

<ITリソースの変更の考え方>

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 AWSのメリットその③ 最先端の技術をいつでも利用可能

AWS ではデータベース、ストレージ、コンピューティング、分析、ネットワーキング、管理ツール、IoT、セキュリティなど、200 を超えるサービスを提供しております。

これらを組み合わせることでさまざまなシステムを構築できます。世界中のユーザーからの声をもとに改善が重ねられています。

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 ERP視点のメリット

ERPをAWSクラウド上で構築するメリットはどこにあるのか、詳細はぜひ、次の章のお客様の声を読んでいただきたいのですが、2つに絞って説明いたします。

 ERPは長期的に利用することが多いため、ハードウェアのリプレイスなどの懸念があるが、これらから解放される

基幹システムは5年~10年と長く利用していくシステムです。オンプレミスの場合、ハードウェアのリプレイスは3~5年周期で対応が必要となります。

その都度、検討やリプレイスに情報部門の手が取られますが、クラウドにすることで、ハードウェアの故障や保守期間に振り回されることなく活用できます。

ハウジング契約も不要、さらに高レベルのデータセンター運用を受けられる

自社でサーバルームを設置する場合、電力量の管理や空調の管理、サーバルームへの入退出管理など、様々な管理が必要となり、非常に労力が必要となります。

AWSを利用することにより、上記の労力から解放されます。

また、様々な第三者機関によるセキュリティに関する認証を取得し、AWSのデータセンターの所在地については、 AWSの社員ですら場所をしらないほどの秘匿性があり、厳密に管理されております。ハウジングサービスにてデータセンターを借りる点に比べ特別な契約も不要です。

AWSのセキュリティに対する取り組み

AWS は 2006 年のサービス開始時からクラウドコンピューティングの先駆者として、セキュリティを最優先事項としてお客様のイノベーションに迅速に対応可能なクラウドインフラストラクチャーを創造してきました。AWS では、セキュリティ機能の実装や厳格なコンプライアンス要件に対応し、さらに第三者機関による検証が行われています。

ただし、セキュリティとコンプライアンスは AWS とお客様の間で共有される責任です。サービスによって異なりますが、AWS がクラウド環境自体の責任を、お客様にはクラウド内のセキュリティに対する責任と管理を担っていただきます。この共有モデルは、AWS がホストオペレーティングシステムの仮想化レイヤーからサービスが運用されている施設の物理的なセキュリティに至るまでの要素を AWS が運用、管理、および制御することから、お客様の運用上の負担の軽減に役立ちます。

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また、セキュリティに対するサービスも提供しており、既存でお使いのソリューションと組み合わせて、AWSのサービスへ置き換えることも可能です。

責任共有モデル

下半分のオレンジ色の範囲が、AWSが責任を負う「クラウド “の” セキュリティ」です。

インフラ部分(ホストオペレーティングシステムと仮想化レイヤーから、サービスが運用されている施設の物理的なセキュリティに至るまでの要素)をAWSが運用、管理します。

そして、上半分が、お客様(私たち利用者)が責任を負う「クラウド “における” セキュリティ」です。

仮想ネットワークやOS内部(ゲストオペレーティングシステム)、関連アプリケーションソフトウェア、AWSが提供するサービスの各種設定について運用、管理します。

AWSはこの責任共有モデルの性質によって、利用するサービスや使い方に合わせて運用、管理ができる柔軟性と、セキュリティとコンプライアンスを維持するための運用上の負担軽減を両立しています。

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https://aws.amazon.com/jp/compliance/shared-responsibility-model/

 お客様の声

今回は、福岡に本社を置く住宅建材商社のOCHI ホールディングス株式会社様の基幹システム更改プロジェクトの基盤としてAWSが採用された事例についてご紹介いたします。

本プロジェクトでは、GRANDITを稼働させる基盤としてAWSを採用いたしました。当プロジェクトのPMである村上氏がAWSを採用した理由は、性能の変更などに柔軟に対応でき、サーバの更新を含めた総費用の比較でもオンプレミスと大差はなく、BCP対策(事業継続計画対策)なども考慮した結果、クラウドを選択するのは合理的な判断だったと語っています。

OCHIホールディングス株式会社について

「住生活に関するビジネスを基軸として、生活文化の向上と地球環境の保全に貢献します。」との経営理念のもと、住生活に関するビジネスを充実させるとともに、新しい分野へ事業ポートフォリオを拡大することで、「安心・安全で持続可能な社会インフラを創造するOCHIグループ」を目指している。

現在、建材・加⼯・環境アメニティ・エンジニアリング・その他の5つの事業を展開しており、建材・住宅設備の専門商社としては西日本地区で売上高第1位、全国では第4位のポジションを獲得している。

企業サイトURL

GRANDIT導入事例

※本導入事例は弊社のGRANDIT ビジネスパートナーである株式会社インフォセンスが導入・開発支援した事例です。

まずは AWS の利用状況を教えてください。

AWS で構築したサーバ上にある基幹システムを、各拠点からプライベート接続して利用しています。夜間は日次更新で利用するサーバ以外は停止し、繁忙期にはサーバのリソースを増強し、レスポンスの低下を軽減しています。

サーバ構成は、次のとおりです。

  • EC2(Elastic Compute Cloud):8台
    APサーバ 2台
    DB、BI、電子帳票、データ連携、管理、テストサーバ 各1台
  • ALB(Application Load Balancer):1台

<環境図>

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 クラウドサービスを利用するに至った経緯をお聞かせください。

クラウドを選択した理由は大きく三つありました。

一点目はサーバの処理能力を柔軟に変更できることです。

オフコンからの切り替えであったため、新システムでどの程度のリソースが必要か、判断できませんでした。オンプレミスで機器を調達するとなると、使用するリソースを試算し購入しなければならず、サイジングに対するリスクを負うことになります。それに対してクラウドは、必要な時に必要な分だけリソースを調達できる点にメリットを感じました。

また、オンプレミスの場合、アプリケーションの負荷に対するサーバ選択を誤ると、ソフトウェア側での解決を優先せざるを得なくなり、対応が難しくなります。長期的な利用で想定されるデータ量の増加に伴う性能低下に対しても、クラウドならば柔軟に対応が可能であると考えました。

二点目は費用面です。

昨今、サーバメーカーの保守サポート期限の短縮化傾向により、オンプレミスのメリットである再リースが選択できなくなってきました。定期的なハードウェアの更改に伴う、ハードウェアの購入費用や新サーバへの移行時の費用なども含めて考慮すると、クラウドとのTCO(総保有コスト)の差は少なくなっています。

また、ハードウェアを準備する場合、初期購入の時点で5年後の利用状況を考慮したキャパシティの機器を選択する必要があり、高額の初期費用が必要となります。オンプレミスの場合、システムの構築段階からハードウェアが必要となるため、購入からシステムのサービスインまで、期間が長いプロジェクトになるほど購入したハードウェアを有効的に使えないことも懸念されます。

従量課金のクラウドならば、必要な時に必要な分のリソースを利用することが可能なので、上記の懸念に対して柔軟に対応でき、費用を抑えることも可能でした。

三点目は信頼性と多様な働き方への対応です。

BCPの観点からもAWSのようなメジャーなクラウドであれば稼働率は99%を超える信頼性が担保されます。オフコン時代は、ハードウェア障害により、丸1日利用できないこともあり得ましたが、AWSであれば、丸一日使えなかったという障害も聞いておりませんので、信頼性は高いと思います。

旧システムでは要望が多いけれど実現が難しかった、社外での基幹システムの利用についても、専用線で構成した閉域網のネットワークに、回線ベンダーが提供しているインターネットVPN機能を使用することで、タブレット端末での利用を可能としました。

「情報漏洩などセキュリティに不安がある」「メリットが分からない、判断できない」「ネットワークの安定性に不安がある」など、クラウドを利用するにあたり懸念される企業が多いなか、不安はありませんでしたか。

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オフコンをやめる時点で、基幹システムの基盤として、オンプレミスとクラウドでの比較検討を行いましたが、上記で記載したように必要なスペックの見積や、保守期限の問題等を総合的に考えると、クラウドの方が将来的にはメリットが大きいという判断でした。(オンプレミスを選択するメリットを感じなかった)。

また、国内のユーザー企業において、サーバの「所有から利用へ」へのシフトが進んでいることや、サーバの納期に関して外的要因(CPUの生産不足や需要過多など)により予定とおりの納品が行われないリスクがないこともクラウドを選択した要因となりました 。

ネットワークに関しては、AWSへ接続している回線の帯域状況をモニタリングできる仕組みがあり、状況に応じて速度を変更して対応することが可能だったので、大きな問題とはなりませんでした。

「実際にクラウドを導入した、効果とご感想をお聞かせください」

満足しています。もう少し費用が下げられれば良いのですが、それにより自由度も下がるので、AWSのことを勉強しながら最適な運用方法を模索していきます。

現在、グループ会社への基幹システムの横展開を実施中であり、AWSのサービスについてセミナー参加等が行えない状況ですので、インフォセンスさんに何か事例の紹介等をいただけると助かります。

今後の展望について

2020年4月にサービス利用開始後、AWSによる新しいITインフラは安定稼働を続けており、スペックの変更やディスク領域の拡張などを容易に実現できるAWSの利便性を実感しています。さらにAWSを活用していくために、現在、オンプレミスで運用している基幹システム以外のサーバをAWSへ移行することも検討しています。基幹システムのクラウドへの導入が完了したことにより、IT資産を保有する必要がなくなり、「ハードウェアの資産管理」「ハードウェア障害からの復旧対応」「サーバを管理するための付帯設備」等が不要になりました。クラウド上のIT資産は専門性に特化した会社にアウトソーシングすることにより、自社の保守の負担を軽減し、コアな業務に注力させることができます。

今後、IaaS(Infrastructure as a Service)として、AWSを利用するだけでなく、社内でデジタルトランスフォーメーションを推進するうえで、IoTやAIなどの新たなAWSのサービスを導入していきたいと考えています。

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

まとめ

今回は、ERPをAWSクラウド上に構築するメリット等をご説明いたしました。今後さらに、ERPをクラウド上で活用していく企業が増えていくと思います。

AWSの認定パートナー(Amazon EC2 for Microsoft Windows Serverデリバリーパートナー(※))であるインフォセンスでは、AWS利用検討時のご相談も受け付けております。詳しくは下記サイトをご確認ください。

※Amazon EC2 for Microsoft Windows Serverデリバリーパートナー…クラウド移行と Windows ベースのソリューションの最新化の計画、実装、管理を支援する AWS パートナー https://www.info-sense.co.jp/service/

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