AI秘書をどうしたら使えるようになるの?
〜 AIを活用するために必要な知識(役割・工程・構想)〜

1. AIを活用するために必要なこと(役割)

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AIを活用するために必要なこと(役割)

あなたが、ECサイトの管理者だったとしましょう。次のような要求を考えたとします
【要求】ECサイトで販売している大量の商品画像のタグ付けを自動化したい

上記の要求を、目的(背景)と情報の観点からそれぞれ要点を整理してみましょう。

【目的】タグ付けの自動化(毎月数千点に及ぶ人手による商品タグ付けのコストが大きいため削減したい)
【情報】大量の商品画像

AIを活用するには、AIの役割とあなたの役割を正しく理解する必要があります。
そのためには、利用する目的と提供できる情報を整理して、AIへの要求を明確にする必要があります。
上記を前提に、あなたとAI秘書の役割を確認していきましょう。


AI秘書の役割 - アシスタント

AI秘書はアシスタントの役割を持ちます。あなたの要求(目的・情報)を達成するための手段を提供します。
アシスタント担当のAI秘書は「手段」をあなたへ提供し、あなたは「目的」と「情報」をAI秘書へ提供します。

【要求】ECサイトで販売している大量の商品画像のタグ付けを自動化したい
【目的】(あなた)タグ付けの自動化(毎月数万点に及ぶ人手による商品タグ付けのコストが大きいため削減したい)
【情報】(あなた)大量の商品画像
【手段】(AI秘書)商品画像の識別


AI秘書の役割 - コンサルタント

AI秘書はコンサルタントの役割も持ちます。豊富な経験とスキルから、情報をどのように活用できるかのアイデアを提案します。
あなたは「情報」をAI秘書へ提供することで、コンサルタント担当のAI秘書は「提案」と「手段」をあなたへ提供します。

【要求】蓄積された自社内の情報を活用して生産性を向上したい。
【情報】(あなた)会議の音声記録、デジタル帳票
【提案】(AI秘書)議事録生成の自動化、経費申請の自動化 など
【手段】(AI秘書)音声文字変換、領収書・伝票の識別 など

AI秘書とあなたの役割をそれぞれ説明しました。アシスタントまたはコンサルタントの立場それぞれで共通して要求を達成するための何らかの手段を提供するようです。では、提供できる手段にはどのようなものがあるでしょうか。


AI秘書のスキル(得意なこと) - 要求を実現する手段

一般的なAIの活用方法として、3つの手段が挙げられます。

  • 識別 - 与えられた情報の種類(カテゴリ)が何であるかを判断します。(分類、クラスタリングなど)
  • 予測 - 現在の情報から未来において取りうる値を推測します。(在庫管理、売上予測など)
  • 生成 - 与えられた情報から異なる情報を生成します。(翻訳、スタイル変換など)

AI秘書は要求を実現する手段として、得意なスキルを持っていることがわかりました。
一方で、具体的にどのような情報を取り扱うことができるのでしょうか。


AI秘書が取り扱う情報 - 情報の種類

一般的にAIが取り扱う情報には、以下のような種類と用途が挙げられます。

  • 画像 - 商品の識別、行動の認識、デザインロゴの生成など
  • 文章 - ニュース記事の識別、文法や品詞の識別など
  • 音声 - 音声の識別、会話の生成、文章への変換など
  • その他(センサデータ、帳票データ、入出庫データ など)- 故障の予兆検出、ログデータの分析など

2. AIを活用するために必要なこと(工程)

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AIシステム開発 工程4フェーズ


AI秘書の役割が理解できたところで、AIならびにAIシステムを実際に作成していくための工程についてみていきましょう。
AIを導入する際には、「構想」「PoC」「開発」「運用」の4つのフェーズを順に進めていくことが一般的です。
それぞれがどのようなものか、詳細を確認していきましょう。

AI導入のフェーズ1「構想」- (1. 構想・ 2. PoC・3. 開発・4. 運用)

htu2AIシステム開発 構想フェーズ

 

まずはじめのステップとして、「構想」というフェーズに着手します。
このフェーズでは、AIへの要求をあなたとAI秘書それぞれが整理および検討し、明確に定義します。
さらに、それらを実現するための予算(費用)とスケジュール(期間)を検討して、実現のための計画を立てます。

AIへの要求

AIへの要求を、「目的」「情報」「手段」の要点から整理して明確にすることを説明しました。
具体的にそれぞれを定義するためには、さまざまなことを整理する必要があることがわかります。

  • 目的の定義
    AIを必要とする前提(背景・課題・問題)と導入効果(優先度・重要度)を整理して、目的を明確に定義します。

  • 情報の定義
    AIへ供給することができる情報の条件(調達・数量・場所)を整理して、情報を明確に定義します。

  • 手段の定義
    AIが目的を実現するための手段の条件(処理・精度・速度)を整理して、手段を明確に定義します。

予算(費用)とスケジュール(期間)

AIへの要求が明確に定義されたところで、次にそれらを実現するための予算とスケジュールを検討して計画します。
予算(費用)- 要求を実現するために想定している予算(あなた)を考慮して、費用(AI秘書)を計上します。
スケジュール(期間)- 要求を実現するために想定しているスケジュール(あなた)を考慮して、期間(AI秘書)を設定します。

AI導入のフェーズ2「PoC」- (1. 構想・ 2. PoC・3. 開発・4. 運用)​​​​​​​

htu3AIシステム開発 PoCフェーズ
 

構想フェーズにより、AIへの要求が明確に定義されました。費用と期間に従い、AIを作成していきます。
このフェーズは一般的に「PoC」と呼ばれています。日本語で「概念実証」や「実証実験」などと言われているものと同様です。

具体的には、以下のようなフローでAIを作成していきます。

  • 構想フェーズで定義された情報の条件に基づいたデータを調達します。
  • 調達されたデータをAIで利用できる形式へ加工します。
  • 構想フェーズで定義されたAIを実装し、精度・速度などの性能指標を検証します。
  • 計画の期間内に性能指標を満たせば完了、満たせなければ構想フェーズに戻り、情報と手段の条件を再定義します。

 

​​​​​​​AI導入のフェーズ3「開発」- (1. 構想・ 2. PoC・3. 開発・4. 運用)

htu4AIシステム開発 開発フェーズ
 

PoCフェーズにより、構想フェーズで定義されたAIが実現されました。
作成されたAIを実際に運用できる形式にするため、システムの「開発」フェーズに着手します。
ここから先のフェーズでは、要求を満たす上で必要となるAI外のシステム要件および仕様を明確に定義していきます。
AI秘書は、システムインテグレーションにおける経験も豊富なため、AI外の領域において多くのノウハウを持ちます。
具体的に、以下のようなフローでシステム開発を行なっていきます。

  • 要件定義、基本設計
  • 詳細設計、実装 ※この部分にPoCで作成されたAIが組み込まれるイメージ
  • 単体テスト、結合テスト
  • 総合テスト、システム検収
     

AI導入のフェーズ4「運用」- (1. 構想・ 2. PoC・3. 開発・4. 運用

htu5AIシステム開発 運用フェーズ
 

開発フェーズが完了したら、いよいよ本番運用です。多くの工程を得てシステムが無事完成しました。
検収作業を完了させ、いよいよ稼働です。多くの費用と期間を費やしたAIシステムがあなたの目的を実現します。
さて、たくさんの手間暇かけて開発されたAIシステムですが、当初思い描いた期待通りの完璧な結果が得られるでしょうか?
想定している仕様通りに事が進めば御の字ですが、AI導入の実績例などからそれが容易ではないことが伺えるでしょう。

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(出典)総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)

これらの課題をAI導入時の各工程別に分けてみましょう。どの工程に課題が多くみられるでしょうか。

  • 構想フェーズの課題
    • AIの処理結果の質を担保できない
    • 有用な結果が得られるか不明
    • データ収集・整理が不十分
    • AI導入に係るコストが高い
    • AIの処理プロセスを対外的に説明できない
    • AI導入のために何をすればよいのか不明
  • PoCフェーズの課題
    • AIの導入を先導する組織・人材の不足
  • 開発フェーズの課題
    • 既存システムとの接続性の確保・統合
    • AIのセキュリティ

整理してみると構想フェーズに関連した課題が多いようです。次に、このような課題の原因を挙げてみます。

AIの処理結果の質を担保できない AIはシステムモジュールに比べて扱う情報量が桁違いに多いため、テストで振る舞いを保証することが困難です。
有用な結果が得られるか不明 求める結果、目的によってはAIの処理に不向きなタスクになることもあります。最適な手段が常にAIとは限りません。
データ収集・整理が不十分 提供する情報の量・質の不正。人間同様の構造解釈を実現するには、相応の情報を提供する必要があり調達が大変です。
AI導入に係るコストが高い AIは訓練された構造解釈に従って推論する機能以外持たないため、開発費用は規模と目的が大きくなるほど膨らみます。
AIの処理プロセスを対外的に説明できない AIのアーキテクチャの構造上、推論の判断根拠を端的に説明することは困難です。※CNNに関しては例外。
AI導入のために何をすればよいのか不明 AIの役割を理解する必要があります。AIの役割は手段の提供であり、目的の提供ではありません。


このような事が運用開始後に意図せず発覚してしまうため、AIシステムを一度で要求通り仕上げることが難しいのです。上記の課題を解決するためには、以下のような前提でAIへの要求を定義していく必要があるでしょう。

  • AIには合格点(ミスを許容する割合)を設定する必要があります。(AIの処理結果の質を担保できない)
  • AIへ要求する目的がAIに適したタスクであるか(AI以外にするか)を判断する必要があります。(有用な結果が得られるか不明)
  • AIへ供給する情報は適切な質と量を調達することが必要です。(データ収集・整理が不十分)
  • AI導入の費用対効果を設定する必要があります。(AI導入に係るコストが高い)
  • AIの振る舞いを説明する必要がある目的かどうかを判断する必要があります。(AIの処理プロセスを対外的に説明できない)
  • AIの役割とあなたの役割をそれぞれ正しく理解する必要があります。(AI導入のために何をすればよいのか不明)

構想フェーズでは、AIへの要求ならびに期間とスケジュールを的確に設定の上、条件を明確に定義することを説明しました。
それらを正確に行うためには、これらの要点を整理・検討・定義すればよいかの具体的な方法が必要です。
ここまでの説明で、AIとあなたの役割、AIシステムを実現する工程についての理解を深めていきました。
最後に、工程において重要となる「構想」を実際にどのような方式で行えばよいかを学んでいきましょう。

3. AIを活用するために必要なこと(構想)

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AIを活用するために必要なこと(構想)


要求を実現するAIシステムを開発・運用するには多くの問題点が潜在していることがわかりました。
そのような結果とならないためには、工程における構想フェーズを正しく行う必要があると説明しましたね。
構想フェーズでは、あなたとAI秘書が以下をそれぞれ検討し、明確に定義することを目標としていました。

AIへの要求

  • 目的の定義
    AIを必要とする前提(背景・課題・問題)と導入効果(優先度・重要度)を整理して、目的を明確に定義します。

  • 情報の定義
    AIへ供給することができる情報の条件(調達・数量・場所)を整理して、情報を明確に定義します。

  • 手段の定義
    AIが目的を実現するための手段の条件(処理・精度・速度)を整理して、手段を明確に定義します。

予算(費用)とスケジュール(期間)

予算(費用)- 要求を実現するために想定している予算(あなた)を考慮して、費用(AI秘書)を計上します。
スケジュール(期間)- 要求を実現するために想定しているスケジュール(あなた)を考慮して、期間(AI秘書)を設定します。

このように羅列すると単純そうですが、実際にこれらの指標を明確にするには具体的な方法が必要です。
そこで、一つのアイデアとして5W3Hをベースに要点を絞り込んでみましょう。一例として示してみます。

要求:30種類におよぶ食品パッケージの製品出庫仕分け作業を効率化したい。

  • 目的
    • Who(誰が、誰を):自社、人事、現場、作業員
    • Why(なぜ、どうして):生産性の向上、労災リスクの低下(人手不足による作業員の負荷が増大)
  • 情報
    • What(何を):食品パッケージ30種類の画像データ
    • Where(どこで):工場3拠点の各仕分け現場(カメラを設置して画像データを調達)
  • 手段
    • How(どのように、どうやって):画像を識別するAIを検証 ※AI秘書が提供
    • How Many(いくつ):性能指標(精度:90%以上、速度:1,800個/時(30個/分))
  • 予算とスケジュール
    • How Much(いくらで):2,500万円(PoC 500万円、システム開発 2,000万円 )
    • When(いつ、いつまでに):来年の8月より本番稼働開始(カットオーバー)
 


上記の各項目を効率よく整理するために、AIデザインキャンバスを作成し、記載例の見本を用意しました。
見本に習って各項目を整理することで、AIシステムの要件を正しく定義できそうですね。
※AIデザインキャンバスのテンプレートと見本は下記のボタンからダウンロードできます。

AIデザインキャンバスのテンプレート/見本

以上、AIを活用するために必要な知識(役割・工程・構想)についてお話ししました。
AI秘書とあなたには、それぞれ行うべき適切な役割があることを学びました。
AIシステムを実現するためには、4つの工程(構想・PoC・開発・運用)があることを知りました。
AIシステムを要求通り実現するためには、構想を正しく行う必要があり、具体的にどのような方法で行えばよいかを示しました。

上記を活用して、あなたのお仕事にお役立ていただければ幸いです。充実したAIライフを楽しみましょう!