外観検査の不良品排除(Vol.9)

 2018.12.11  株式会社システムインテグレータ

さて、ディープラーニングを使って不良品を発見したとき、その後どうすればいいのでしょうか。パトライトのような信号灯を点灯させる、コンベアなどの搬送装置を止める、止めずに排除する、など製品に応じていろいろな対策があります。今回は、こうした不良品排除方法にスポットを当てて、「百聞は一見に如かず」の方針でいろいろな会社の製品や動画を紹介します。

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排除装置の種類

コンベアなどの搬送装置を止めずに、自動的に排除する仕組みにはどのような方法があるでしょうか。アンリツインフィビス社のホームページに、主に食品を対象とした選別部(排除装置)の方式がビデオ付きで紹介されていて、これがとても参考になりましたのでご紹介します。

食品の場合は、金属検出機やX線検出器などで異物混入を検知したり、カメラ映像を元に外観でわかる不良をAIで検知して、表1のような排除装置に通信してタイミングを合わせて自動的に排除するわけです。

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項目 イメージ
フリッパ方式

不良品を1〜2本の選別ゲート(アーム)で振り分ける汎用性の高い方式。箱物や厚みのある袋に適している。

フリッパ方式
ビデオ:フリッパ選別機

ドロップアウト方式

不良品が来たら選別ゲート(コンベア)が自動的に下に傾いて下に落とす方式。薄い商品を選別するのに適している。

2
ビデオ:ドロップアウト選別機

アップアウト方式

不良品が来たら選別ゲート(コンベア)が自動的に上に傾いて下に落とす方式。薄くて軽い商品を高速に選別するのに適している。

アップアウト方式
ビデオ:アップアウト選別機

エアージェット方式

不良品が来たらエアーを吹き付けて排除する方式。小型・軽量品を高速で選別するのに適している。

エアージェット方式
ビデオ:エアージェット選別機

トリップ方式

不良品が来たら選別ベルトが横方向に動いて上に乗っている不良品を左右に運び出す方式。比較的大きな箱物を選別するのに適している。

トリップ方式

 

プッシャー方式

不良品が来たらエアーシリンダの先端に付いている選別ゲート(押し出し部)が自動的に傾いて下に落とす方式。カートンなど箱物を選別するのに適している。

プッシャー方式
ビデオ:プッシャー選別機

ターニング方式

不良品が来たら回転する選別ゲートで排除する方式。大型の箱を比較的高速に選別するのに適している。

ターニング方式

 

キャリア方式

不良品が来たら搬送板が左右にスライドして商品の通過レーンを変える方式。同一平面上で方向分けするので衝撃が少なくシールをする前の商品に適している。

8
ビデオ:キャリア選別機

シュート方式

不良品が来たら選別シュートが反対方向に傾いて不良品を下に落とす方式。乾物、冷凍食品、お菓子など比較的軽量な商品のバラ流しに適している。

シュート方式
ビデオ:シュート選別機

シャトル方式

不良品が来たらコンベアが自動的に縮んで下に落とす方式。付着性の高い精肉やカット野菜など未包装の畜産物や水産物のバラ流しに適している。

シャトル方式
ビデオ:シャトル選別機

表1:アンリツインフィビス社の排除装置
写真などの出典:アンリツインフィビス社のホームページ

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外観検査装置のあれこれ

表1に掲げたものは、既存ラインに取り付けることが可能な排除装置ですが、実際の現場では検査対象に応じた複雑な仕掛けが必要となることも少なくありません。ベルトコンベアに流れてくる製品を上部からカメラで撮影して「はい判定」って感じで済めばいいのですが、そんな単純な仕組みでは太刀打ちできないケースが山ほどあるのです。

仕掛けは千差万別です。それをイメージできるように、ホームページ上で紹介動画や図解を公開している会社の外観検査装置をいくつかピックアップしてみました。リンク先の動画や図解をご覧になって、製品ごとに多様な仕掛けの検査装置があることを実感してみてください。

会社名 ソリューション概要 ラインナップ(動画)
アンリツインフィビス株式会社 検査機とともに選別部(排除装置)を開発・製造 表1に示す製品
株式会社野毛電気工業 メッキ技術に強みを持ち、そこで培われた技術を活用して外観検査装置を販売 外観検査装置 EIT
赤外線検査装置 IRScope
3次元検査装置 3DIT
東芝デジタルソリューションズ株式会社 フィルムや紙、鉄、非鉄などの産業用素材、医療品製造業のPTP包装の欠陥などの表面検査システムを開発・販売 ウェブ外観検査装置
PTP外観検査装置
フラットパネル外観検査装置
非金属介在物測定装置
日新化成株式会社 医薬品関連への強みを活かし、錠剤の外観検査や粉体の異物検査装置を開発・販売 錠剤外観検査機
粉体異物検査機
富士電機株式会社 ビジョン製品として、製薬の細粒剤検査やカップ内面、チューブ外観など各種検査装置を開発・販売 細粒異物検査装置
カップ内面検査装置
チューブ外観検査装置
樹脂トレー外観検査装置
松原工業株式会社 外観検査受託サービスを提供するほか、自動外観検査装置を開発(動画は6面検査) リード/ボール検査装置
ヴィスコ・テクノロジーズ株式会社 画像処理検査装置メーカーの立場でさまざまな外観検査装置を開発・販売 汎用検査装置
専用検査装置
株式会社デクシス 外観検査システム技術に強みを持ち、さまざまな外観検査装置を開発・販売(動画は人型外観検査装置など) 人型外観検査装置
ボトル外観検査装置
キャップ外観検査装置
異物検査装置
株式会社三明 化合物ウェハ、フィルム、樹脂のパーティクル、気泡、不純物などの異物やキズ、ムラの検出 自動外観検査装置
タカノ株式会社 スリット光を活用した画像をもとに複雑な形状の検査対象の外観を検査 表面欠陥検査装置
マイクロエンジニアリング株式会社 オーダーメイドの外観検査/画像処理装置メーカー シート外観検査装置
地合計測装置
株式会社SCREENホールディングス 鋳造部品をマルチアングルからのカメラで外観検査して自動的に良品・不良品を振り分け 鋳造部品自動外観検査装置
株式会社佐々木エンジニアリング 画像処理を応用した外観検査機を設計・製造 簡易画像検査装置

表2:いろいろな会社の外観検査装置と紹介動画

まだまだ枚挙にいとまがないのですが、きりがないのでこのあたりにしておきます。実に多くの企業が外観検査装置を作っていること、一口に外観検査と言っても対象製品によって多種多様であること、外観検査装置を製品化しても対象製品ごとにカスタマイズが必要ということ、などがイメージできたと思います。

【麻里ちゃんのAI奮闘記】インライン式検査ってどういう意味?

インライン式検査ってどういう意味?

先輩:あれ、麻里ちゃん。また、難しい顔しているよね?
麻里:あ、せんぱい。インライン式検査装置とかいう意味がよくわからないんです。メールで「インラインで失礼します」ってのは時々見るのですが、それと同じなの??
先輩:ふむふむ。インラインはもともと「直列の、ラインに並んだ」って意味だよ。インラインスケートだって一列に車輪が並んだスケート靴だろ。メールだと相手のメールを引用するときに使うけど、これもその応用だね。
麻里:じゃあ、インライン式検査装置ってどういう意味になるの?
先輩:なら、質問返し。オフライン式検査装置ってどういうものかな?
麻里:う~ん、それはたぶん製造ラインから取り出して検査する方式ですね。あ、そうか!インラインは製造ライン上に組み込んだ検査装置ってことか。
先輩:ふふ、ピンポーン。製造設備や検査装置をインライン(直列)に並べて流れ生産(ライン生産)にすれば、生産性が大幅に向上するだろう。それに連続的に測定するので不良品の発生時刻を自動的に記録できトレーサビリティもやりやすくなるんだ。
麻里:じゃあ、断然、インライン検査の方がいいですね。
先輩:もちろん、そうなんだけど、インラインで検査するには表2の検査装置のような相応の仕掛けが必要になるだろう。製品に応じて検査設備を設計・製造する初期コストがかかるし、人が1品ごとにためつがめつ眺めるような検査はインラインに組み込むのが大変だ。
麻里:だからいまだに人手で目視検査したり、全数検査でなく抜取検査で妥協したりというオフライン検査が多いってことですね。
先輩:でも、センサ部分はロボットアームやマルチアングルカメラ、判定部分はAIが使われるようになってきて、だんだん人手によらない検査が取り入れられていきつつある。リーン生産と呼ばれるぜい肉のない、つまり無駄のない生産方式への追及はこの先も続くと思うよ。
麻里:せんぱいも、コーヒーショップでコーヒー飲んだり、喫煙室でタバコ吸ったり、女子社員の席に行って雑談したり、というようなオフラインだらけの仕事習慣を改め、リーン生産方式取り入れた方がいいですよ。
先輩:ぶっ。僕は繊細な人間なので、機械と違ってときどきリフレッシュする必要があるんだよ。その方が生産性上がるんだってぇ。
麻里:と・き・ど・き・ねぇ~( ̄ー ̄)


lights.png連続撮影と間欠撮影

インラインで外観検査する場合、連続送り方式と間欠送り方式があります。連続送りは、Vol.5で説明したように連続的に流れてくる製品を動画撮影して、フレーム(静止画)に映っている製品をオブジェクト検知して正常/異常を判定する方式です。

一方、間欠送りは、製品がカメラの前を流れるごとに搬送を一瞬停止して撮影する方法です。こちらはVol.8で紹介した光電センサや近接センサなどで製品がカメラの下に来たことを検知し、搬送装置とカメラに連動して「カシャ」っと撮影します。1枚ごとに1製品ずつ同位置に写るので、オブジェクト検出や複数画像に同一製品が写ったときの処理などが不要になります。

まとめ

異常検知システムは、大きく、センサー部分、判定部分、アクチュエータ(作動装置)から構成されます。外観検査の場合、センサーはカメラですが、アクチュエータは、搬送装置だったり、排除装置だったり、信号灯だったりします。また、製品のどの面を撮影するかによってカメラの撮影方法もそれぞれに工夫を凝らしたものになり、オーダーメイドもしくはカスタマイズで外観検査装置を製造するケースも少なくありません。 これまでは、3つの構成部が一体となっている専用検査装置が多かったのですが、判定部分をディープラーニング式にした場合、判定部分を独立した構成の方が汎用性が高くなります(ソフトウェアのコンポーネント化と同じですね)。

梅田弘之 株式会社システムインテグレータ :Twitter @umedano

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