クラウドERPとは?メリットや導入ポイントを徹底解説

 2021.03.02  株式会社システムインテグレータ

クラウドERPとはクラウドコンピューティング上で動作するERPのことです。ERPはオンプレミスが主流でしたが、昨今はクラウドが台頭しています。
ERPはビジネスに大きな変革をもたらし、競合優位性を手にする体制を構築する力があります。10年前まで「ERPは大企業が導入するもの」という認識が強かったですが、最近では経営情報の可視化、運用負担の軽減、データ活用の促進等を目的に中堅・中小企業の導入も増加傾向にあります。

また、一言にクラウドERPといってもいくつか種類が存在しそれぞれ特徴があります。本稿では、クラウドERPの種類・特徴を解説し、さらにオンプレミスとの比較をします。

ERPのキホン~ERPの基礎からDXへの活用まで徹底解説~

クラウドERPとは

クラウドERPとは?メリットや導入ポイントを徹底解説

そもそもERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用する計画=考え方を意味します。日本語では、統合基幹業務システムといい、「販売・調達・会計・人事・生産」といった業務に必要な機能を一元管理するITシステムを指します。
ですので、クラウドERPとは「クラウド上のERP」ということになります。

ERPについてはこちらの記事で詳しくご紹介しております。
ERPとは?統合基幹システムの種類やメリットなどを解説

ではクラウドERPとそれ以外のERPは何が違うのでしょうか。
ここからはその違いについてご紹介していきたいと思います。

 クラウドERPとオンプレミスERPの違い

世の中には多くのERP製品、サービスが存在しています。ERPは、近年注目を集めているクラウドERPとそれ以外の従来型のオンプレミスERPに分けられます。

まずは、そもそもクラウドとオンプレミスは何が違うのでしょうか。

 クラウドとは

クラウドERPのクラウドとは、「クラウドコンピューティング」「クラウドサービス」の略称です。

「クラウドコンピューティング」とはユーザがインフラ(サーバ、ネットワーク環境等)やソフトウェアを持たなくても、インターネットを通じ、ソフトウェア、サーバなどの各種リソースを利用するサービスのことを指します。

「クラウドサービス」とはそのクラウドコンピューティングを利用したサービスの総称です。クラウドサービスには大きく分けて3つの種類があります。

 IaaS(Infrastructure as a Service)

インターネット経由で仮想サーバやストレージ、ネットワークなどのハードウェアやインフラまでを提供するサービスです。ユーザはその提供された仮想サーバに任意のプラットフォームやアプリケーションを入れて利用することができます。インフラ設定やサーバ管理等専門知識が必要になりますが、自由度が非常に高いサービスです。

(例)Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)、 Google Compute Engine

PaaS(Platform as a Service)

システム開発に必要なミドルウェア、データベース管理システム、プログラミング言語、WebサーバOSなどのソフトウェア一式を提供してくれます。開発環境がある程度そろっているため、利用する言語等は限られますが、IaaSと比べ運用管理の負担が軽減されます。

(例)AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、GCP(Google App Engine)

 SaaS(Software as a Service)

従来はパッケージとして提供されていたアプリケーションを、インターネット上で利用する提供形態です。端末にアプリケーション等をダウンロードすることなく、インターネット経由で利用することができます。クラウドサービスとして一般的にも一番なじみがある形態だと思います。

(例)GmailなどのWebメール、Dropboxなどのオンラインストレージ、SalesforceなどのCRM

 オンプレミスとは

オンプレミスとは、サーバやソフトウェアなどの情報システムを自社が管理する設備内に設置し、運用することを指します。従来は一般的なシステムの運用形態だったため、呼称がありませんでした。

しかし、「クラウド」が登場したことにより、形態を区別するため「オンプレミス」という言葉が使われるようになりました。

 クラウドERPの特徴

クラウドERPとは?メリットや導入ポイントを徹底解説ここまでご紹介した通り、クラウドERPとはクラウドコンピューティング上で動作するERPのことです。クラウドERPはネット環境を経由して利用できることが特徴で、PCだけでなく、スマートフォン等ほかのデバイスでも利用できるシステムが増えています。

ただし、一言にクラウドERPといっても、「IaaS、PaaSの環境に構築するERP」、「SaaSとして提供されているERP」と2つの種類が存在します。

 クラウドERPの種類

ここからは2種類の違いについて説明致します。

IaaS、PaaSの環境に構築するERP

このタイプのクラウドERPは、サーバが自社内に無いということ以外は、ソフトウェアライセンスを購入することやサーバを調達するといった点で、従来のERP導入と同じといえます。そのため標準機能では不十分な場合、ユーザのニーズに応じてカスタマイズが可能です。
インフラ環境がクラウドのため、利用料を支払うのみでサーバを利用でき、またサーバを増やしたりスペックを上げたりすることが容易というメリットを享受することができます。

さらに、IaaS型とPaaS型では「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の2つに分類され、それぞれ特徴が異なります。

 プライベートクラウド

自社専用のリソースとして利用できるのがプライベートクラウドです。パブリッククラウドに比べて価格は高くなりますが、他社からの干渉を一切受けず、自社向けのワークロードのみが稼働するメリットがあります。

 パブリッククラウド

複数のユーザで同じリソースを共有するマルチテナント型のクラウドです。とはいっても、インフラ環境は仮想的に分断されているため、個別のリソースは用意されています。
パブリッククラウドの特徴は何より安いことです。クラウドベンダーはサーバのリソース消費を全体通して均一化することで通常よりも安価にサービスを提供できます。

ただし、場合によっては他社からの干渉を受けて、パフォーマンスが低下するなどの問題もあります。

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SaaSとして提供されているERP

このタイプのERPは料金体系が非常にシンプルかつ安価なことで人気を集めています。一般的に「クラウドERP」と聞いてイメージするのはこちらでしょう。また、サーバ調達やソフトウェアインストールといった導入の手間がかからないため、IT技術者が少ない環境でも導入しやすいのが特徴です。

ただし、SaaS型は機能まで含めてパッケージされているため、基本的にユーザ側で細かくカスタマイズすることはできません。

 クラウドERPの例

ここで代表的なクラウドERPの例をご紹介いたします。

GRANDITクラウドサービス

日本の商習慣に適合する国産ERPとして実績の高いERPです。Azure、AWS、IIJ GIOのほか、様々なクラウドプラットフォームを選択することが可能です。中堅・大企業が対象で、柔軟性・拡張性・耐障害性・保守性・経済性に優れており、環境に応じて様々なカスタマイズを加える事ができます。

https://products.sint.co.jp/grandit

奉行V ERP

導入実績63万社を誇る中小企業向けのERPです。パッケージ製品ラインナップはERP業界No.1であり、自社で必要な業務から、部分的・段階的に導入が可能です。外部連携用のデータ連携アダプタ機能と自動実行処理機能も搭載されています。

https://products.sint.co.jp/grandit/template/obc

HUE

世界初の人工知能機能を搭載した大企業向けのERPです。製品コンセプトは「ノンカスタマイズ」です。同製品は、導入企業で発生した機能ギャップを、業種・業態特有の要件や商習慣を汎用的な機能にして標準として組み込んでいます。

https://www.worksap.co.jp/services/

Microsoft Dynamics 365

マイクロソフト社が提供するSaaS型のERPです。顧客管理と営業支援を中心として複数の業務アプリケーションと、AIの搭載やAzureで提供されるサービスとの連携を売りにしています。その他、Office 365などマイクロソフト社製品との相性が良いのも特徴です。

https://dynamics.microsoft.com/ja-jp/

Oracle NetSuite

クラウドERPベンダーとして20年以上の実績があるSaaS型のERPです。基幹業務を網羅したシステムに、独自の開発プラットフォームを提供することでカスタマイズ性を高めた製品です。

https://www.netsuite.co.jp

OBIC7

1997年のリリース以来、累計導入実績数約20,000社を誇る、国産ERP最大手の製品です。シンプルなシステム設計と過去のOBIC7事例をベースとしたソリューション提供です。

https://www.obic.co.jp/erp_solution/

ProActive E2

国産初のERPとして27年間、6,200社を超える導入実績に裏打ちされた豊富な機能を保持しています。旧バージョンではクライアントサーバー形式で提供していたため、現在のWeb形式に移行した後でも、クライアントサーバー形式のような操作性を実現しているのも、主な特徴の1つです。

https://proactive.jp/

SAP Business ByDesign

中堅・中小企業向けのERPです。必要に応じて4つのプランから選択でき、財務、顧客管理、人事、プロジェクト管理、調達・購買、サプライチェーン管理、ローカリゼーションなど幅広い機能を備えています。

https://www.sap.com/japan/products/business-bydesign.html

上記でご説明したERPはあくまで一部です。市場にはより多くの種類があります。
ERPの比較に関してはこちらの記事でも詳しくご紹介しておりますので、併せてご覧ください。

2020年度最新版|国産ERPパッケージ9選を比較

 オンプレミス環境のERPの特徴

クラウドERPとは?メリットや導入ポイントを徹底解説-2自社環境にシステムを所有するため、自由にカスタマイズが行えることが最大の特徴です。
また、自社でサーバ等を管理するため、ベンダー企業のセキュリティ等に依存することが無く、サーバと同じ施設内であれば高速にアクセス・利用ができます。

その反面、サーバやネットワーク環境等の設備の用意や、サーバの定期的なメンテナンス、セキュリティ体制の構築が必要なため、初期費用やランニングコストが高くなる傾向があります。

また、従来はオンプレミスのERPが主流だったため、IaaS/PaaSのERPを提供しているシステムの場合、オンプレミスに対応できることが多いです。「クラウドERPの例」でご紹介したシステムもほとんどがオンプレミスで提供が可能です。

 クラウドERPとオンプレミスERPのメリットとデメリット

クラウドERPとは?メリットや導入ポイントを徹底解説-3それぞれのメリット・デメリットについては、以下のような点が挙げられます。

コスト

クラウド

メリット
初期費用が比較的に安価

オンプレミス

デメリット
サーバ等を用意するため初期費用が高額

運用負担

クラウド

メリット
物理的なサーバーメンテナンス等はベンダーに委任
システムアップデートも自動的に行われるので運用負担が少ない

オンプレミス

メリット
自社独自の細かな運用設定ができる

デメリット
物理的なサーバーメンテナンスやシステムアップデート等の対応が必須

カスタマイズ

クラウド

デメリット
ERPによりカスタマイズの自由度は異なるが、オンプレミスのERPに比べて制限があるケースが多い
※GRANDITのようなソフトウェアをクラウド基盤に設定する場合(IaaS/PaaS)には、既存の柔軟なカスタマイズが可能

オンプレミス

メリット
カスタマイズの自由度は非常に高い

セキュリティ

クラウド

クラウドベンダーが提供するセキュリティ要件で決定されるため、一概に言えない

オンプレミス

メリット
閉鎖的なネットワークの中で利用するためセキュリティ性は自然と高くなる
※自社責任においてセキュリティを強化する必要がある

インフラ調達

クラウド

メリット
管理画面から操作するだけで、最短数分で仮想サーバをインスタンス化でき、インフラ調達が非常に安易

オンプレミス

デメリット
拡張の必要性が生じてから実際にインフラを調達するまで時間がかかる

システムとの連携

クラウド

メリット
他システムとの連携に制限がある場合が多いが、最近ではクラウド間連携のサービスが豊富にある

オンプレミス

メリット
インターフェースを自由に構築することで、あらゆるシステムとの連携が可能になる

耐障害性

クラウド

クラウドベンダーの運用形態に依存するため、一概には言えない

オンプレミス

メリット
インシデント管理体制を整えれば障害時も素早い回復が可能

デメリット
自社独自の対応なのでコストはかかる

可用性(冗長化)

クラウドERP

メリット
複数の仮想環境をインスタンスしても低コストであり、冗長化が容易である

オンプレミス

デメリット
別途、冗長化環境の構築が必要なので高額化しやすい

災害復旧(DR)

クラウドERP

メリット
データセンターの所在地によって災害復旧性を高めることができ、海外リージョンを選択してリスクを回避することも可能

オンプレミス

データセンターの所在地によるため、一概には言えない

 クラウドERPの選び方

クラウドERPとは?メリットや導入ポイントを徹底解説-4ERPを導入する際に一番重要なことは、自社が実現したいことを実現できるのかという点です。

例えば、SaaS型のERPの場合、初期費用は安価ですが、大きなカスタマイズは出来ず、自社の業務をシステムに合わせる必要がある可能性があります。システムリプレイスと同時に、自社の業務見直し、システムに業務を合わせたい場合、適していると考えられます。

IaaS/PaaS型のERPはSaaS型と比較してカスタマイズの自由度が高いです。自社の業務に合わせて導入したい場合、こちらの方が適していると考えられます。

そのため、まずは自社でシステム導入したい業務範囲、カスタマイズ要否、予算感等の情報を整理し、どのようなことを実現したいのか明確にすることが重要です。 

クラウドERPが適している企業

オンプレミスとの大きな違いは「初期導入コストが低い」「物理的なサーバ等のメンテナンスが少ない」点です。従って、導入コストを抑えたい、メンテナンスに人員を割きたくない企業の方はクラウドERPを検討することをお勧めいたします。
また、業務がそこまで複雑でない場合、SaaS型のERPも検討していいかもしれません。 

バックオフィス業務改善ならシステムインテグレータ

多くの企業で人手不足が大きな課題となっていますが、バックオフィス業務にはいまだに属人化した作業やアナログ業務が残っており、企業の成長と発展を阻む大きな壁となっています。
バックオフィスの業務プロセスを最適化することで、コスト削減や属人化の防止だけでなく企業全体の生産性向上にもつながります。
当社はERPをはじめとする情報システムの豊富な導入実績をもとに、お客様一人ひとりのニーズに合わせた最適な改善策を提案します。業務の洗い出しや問題点の整理など、導入前の課題整理からお手伝いさせていただきます。
バックオフィス業務にお悩みをお持ちの方は、お気軽に株式会社システムインテグレータまでご連絡ください。

 まとめ

いかがでしょうか。一口に「クラウドERP」と言っても様々な種類があり、どれも一長一短があります。また、クラウドERPと従来型のオンプレミスERPを比較しても、それぞれメリット・デメリットがあります。クラウドだから無条件に良いということはありませんので、まずは自社の業務要件等を整理し、どちらが自社に適しているのか判断することが重要です。

弊社では、ERPの製品内容やどのようなポイントに着目しERPの選定を行うべきかをまとめて整理した「国産ERPパッケージ比較資料」ご用意しております。システム選定時に必要な情報をまとめて参照することができますので、よろしければERPご検討に当たりお役立てください。

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