PSIとは?意味や読み方は?生産・販売・在庫計画を適正化するポイントと手順

 2022.12.15  株式会社システムインテグレータ

進むグローバル化を背景に、サプライチェーンマネジメント(SCM)の重要性および難易度は高まっています。
SCMは全体最適の取り組みですが、生産計画、販売計画、在庫計画といった社内の計画の最適化も同じように重要です。

本記事では、生産・販売・在庫計画を最適化して進めるPSI計画のポイントや、精度の高い生産計画および在庫最適化を実現するPSIのシステム化についてご紹介していきます。

生産管理についてはこちらの記事で詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
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PSIとは

PSIとはProduction(生産)、Sales(販売計画)、Inventory(在庫)の頭文字をとった略称で、それぞれを別々ではなく同時に計画し最適化する「PSI計画」の文脈で使われる用語です。

実態としてはそれぞれ密接に関係しているのですが、従来計画の段階ではあまり連携できておらず、結果として計画の精度が不十分となりがちでした。
計画を同時に進め、密接に連携し精度の高い計画にしようという考え方(手法)がPSI(計画)です。

PSIの仕組みとは

PSIは、生産計画・販売計画・在庫計画を管理することで実際の販売数にあわせて在庫の適正化を図るための取り組みです。在庫の欠品が発生すれば販売機会を失ってしまい、過剰在庫は無駄なコストの発生につながるため、在庫数と販売数のバランスをとれるよう需要予測に基づいて生産計画を立てる必要があります。

例えば、ある製品の販売予定数が1万個だった場合、生産予定数を11,000個とします。在庫が5,000個あったら生産後の在庫数は16,000個になります。しかし実際に7,000個しか売れなければ在庫が9,000個残ることになります。この過剰在庫分は生産コストも管理コストもムダになってしまうのです。

そういった事態を避けるためにも、PSI管理で在庫を最適化することは製造業にとって重要課題になります。

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PSIを取り巻く現状

PSIとは?意味や生産・販売・在庫計画を連携し適正化するポイント

近年、製造業やファブレス製造を行う商社では、需要予測の精度を高めて生産計画や在庫計画を立てたいとの要望が増えております。

詳しく話を聞いてみると、すでにERPを導入しているものの、ERPでは生産実績管理や原価管理しか行えておらず、生産計画はEXCELで立案しているユーザーが非常に多いことに驚きます。

管理すべき品目や工場・ラインも増え、生産計画担当者の経験や勘で立案するには限界に来ており、ERPの入れ替えを機会にPSIのシステム化を検討されているようです。

PSIの重要性について

近年の市場における需要変動の激化やニーズの多様化を背景に、欠品ロスの発生防止や過剰在庫の削減が製造業にとって大きな課題となっています。欠品ロスは売上の損失に直結しますが、過剰在庫はムダなコストにつながるからです。特に今はSDGsに対する関心の高まりもあり、資源の消費を抑えることが求められています。

そこで生産・販売・在庫のバランスを最適化するための取り組みとして、PSI管理の推進が重要視されているのです。

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在庫を保有するメリット・デメリット

PSIとは?意味や生産・販売・在庫計画を連携し適正化するポイント1

そもそも在庫を保有するメリットは何なのでしょうか。

一般的に顧客への納期順守や欠品による販売機会損失の防止、生産の平準化など、やはり需要変動への対応が在庫保有の目的です。在庫を保有すること生産活動を円滑に進めることができ、工場資源(設備や工員)を有効活用できるメリットがあります。

その反面、在庫を保有するためには保管費用が発生するデメリットや過剰在庫や滞留在庫が発生するリスクが伴います。つまり在庫を保有するには、常に最適な在庫量を維持し続ける必要があります。

近年では、顧客ニーズの多様化により、多品種少量生産が当たり前となり、顧客からの注文を予測して最適な在庫量を維持する必要があります。

メリット1:販売機会の損失を防止できる

在庫を抱えない受注生産などの場合は、注文を受けてから製品を生産するため、顧客は製品が届くまで待たされることになります。タイムリーに需要に応えられないと顧客が離れてしまう恐れもありますが、在庫を保有することで顧客から注文を受けてから製品を届けるまでのリードタイムが短縮され、販売機会の損失を防止できます。

メリット2:需要変動にも対応できる

近年は市場の需要変動が激しくなっています。SNS上での情報拡散など何かしらのきっかけで急激に需要が増えた場合、在庫が十分にあれば機会を損失することなく製品を提供できます。

また、災害や設備の故障など、予期しないトラブルが発生して生産がストップしししまった場合にも余剰な在庫があればある程度の期間は販売を続けることができます。

メリット3:仕入れコストの負担を抑えられる

一般的に資材を仕入れる際はまとめて大量に購入する方がコストを抑えることができます。資材の購入費だけでなく、発注・入荷などの作業にかかる人件費も業務の発生頻度を抑えることで削減できます。

デメリット1:保管費用や税金がかかる

在庫を保有している場合、保管場所や管理業務などの費用がかかります。さらに、在庫は企業の資産にあたるため、期末に期首よりも在庫が増えている場合は法人税などがかかります。在庫を販売または廃棄しないと購入額を経費として計上することもできず、資産は増えているのにキャッシュフローが悪化するといった状態になる恐れがあります。

デメリット2:商品価値が低下する

前述したように、在庫がある場合はその保管にコストがかかります。さらに、長期にわたって商品を倉庫に滞留させると商品の劣化や需要の減少など、商品価値の低下につながります。価値が下がった商品は値引きして販売するか、それでも売れなければ廃棄処分する子ことになります。

デメリット3:企業の収益性が悪化する

在庫を保有することで得られるメリットがある一方、余計なコストが発生し、本来得られるはずだった利益が減ってしまうといったデメリットも抱えることになります。在庫が多ければ企業の資産が増えることにはなりますが、売上や利益につながらなければ企業にとってはキャッシュフローの悪化という不利益にしかなりません。

以上のメリットとデメリットを考慮しながら、在庫を最適化することが重要になります。

PSI計画の手順とは

手順①需要予測に基づいた販売計画の作成

在庫数と生産数を適正化するためには、できる限り正確な需要予測が必要です。過去データから、長期的に需要がどのように推移していて、その要因がどこにあるのかを分析します。

分析結果をもとに、販売する商品の種類や数量、時期を計画します。

手順②在庫計画・仕入計画・生産計画の作成

販売計画をもとに、物流や調達に関わる計画を策定します。販売計画の目標を達成できるよう製品や資材などを仕入れる数量や時期の計画を練っていきます。

手順③生産計画の作成

最後に、在庫計画と仕入計画をもとに、販売計画や在庫計画の目標を達成するために必要な生産数量と時期を検討し、生産計画を策定します。

なお、販売計画、生産計画、在庫計画をまとめたものがPSI計画表です。縦軸にそれぞれの計画や見込みの数値を、横軸に月を入れて、各月の計画をわかりやすくまとめられます。計画どおりにいかなければ月ごとの変動にあわせて生産数を調整していくことで在庫の適正化を図ることができます。

PSIによる生産計画

PSIとは?意味や生産・販売・在庫計画を連携し適正化するポイント2

しかし、需要変動が激しい環境下で最適な在庫を維持するための適正な生産計画立案は非常に難しく、過剰在庫や欠品が多く発生してしまいます。このような予期しない需要変動に迅速に対応するには,生産・販売・物流の情報連携が必要不可欠となります。それを解決する手段として、PSI計画(生販在計画)という考え方があります。

PSIとは、Production(生産)、Sales(販売計画)、Inventory(在庫)の頭文字であり、生産・販売・在庫を同時に計画することです。

このとき、生産・販売・物流(在庫)の情報を活用するのですが、情報が統合管理されたERPのしくみが非常に役立ちます。

販売部門からの販売計画や見込み(フォーキャスト)に対して、生産部門の生産計画、基準在庫や生産ロット数から必要量を求め、供給量を算出するのです。

PSI管理では、まず長期PSIを立案して販売部門と合意形成を図りながら、手配や生産能力を確保します。販売部門より、数か月先まで月別に作成された販売計画を提示し、在庫および生産部門の能力を加味して大枠の生産量を決めます。それを月別→週別→日別とブレークダウンさせ、より精度の高い情報として確定していく仕組みを作ります。

これにより在庫を多く持ち過ぎず、顧客への納期を意識した製造が行い、欠品させない生産計画を立案が行えます。

PSIによる生産計画を実現し、在庫適正化を行う上で3つポイントが重要になります。

ポイント1:生産資源の能力を加味した生産計画

PSIにおける生産計画立案・確定に際して生産資源(設備・工員)の能力を加味した計画立案が必要です。特に工員の能力は重要なポイントで工員の勤務期間や経験により、扱える設備や製造できる品目が限定されるケースがあります。設備・工員の能力や負荷を加味した現実的な生産計画を行うがPSIにおいて重要です。

ポイント2:複数拠点での需要を加味した生産計画

精度の高いPSIを実現するためには、”どこで? ”何を? ”PSIにおける需給計画の対象とするか?”が重要になります。

“どこで?”という観点では、工場、工場間や協力会社(外注先)、倉庫など、どこの在庫に着目すかで立案方法は変わります。

自社A工場で生産した中間品を自社B工場へ移動させ、製品を生産する場合は、A工場のPSIにはB工場で該当の中間品がいつ、いくつ必要なるかの需要を加味した生産計画を立てる必要があり、協力会社で仕入品を生産する場合は、原料・材料の調達・支給計画や生産計画、配送計画の立案などが必要になります。

また倉庫における在庫に着目する場合、倉庫と工場の多段階の需給計画を考慮する必要があります。

ポイント3:分析・検証によるPSI管理・在庫の精度向上

最後のポイントとしては、計画と実績の比較・分析を行うことです。立案・確定したPSI計画・プロセスが正しかったのか、改善すべき内容の有無を検証し、生産計画立案の精度向上を図り、在庫最適化を実現するKPIを作成することが重要です。

まとめ

顧客ニーズの多様化により、単一の工場で同じ品目を作り続けられた生産形態は過去のこととなりました。今後は、海外も含めた複数の生産拠点や協力会社も含めた全社ベースでの需要予測に基づいた戦略的な生産計画・在庫計画の立案がますます必要となります。

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