外観検査の撮像ではさまざまな種類のカメラを使用します。
撮像対象物の形状や素材、検出したい異常の種類(キズ・打痕・汚れなど)などによって、一番適したカメラを選びます。カラーにするのかモノクロにするのか、解像度はいくつにするのかなど考慮しなければいけない点は多岐に渡ります。
外観検査で利用するカメラは、エリアスキャンカメラ(以下「エリアカメラ」)とラインスキャンカメラ(以下「ラインカメラ」)のいずれかです。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
エリアカメラの特徴
エリアカメラとは、対象を「面」で撮像するカメラです。最も一般的に用いられるカメラです。
【図1.エリアカメラのイメージ】
ラインカメラと比較すると安価であり、設定や設置も容易なため、汎用性にすぐれたカメラといえます。
ただし、以下のような注意が必要です。
- 撮像範囲が限られるため大きな対象物の撮像には向きません。
- 撮像面全体に照明を均一に当てる必要があるため、照明ムラを起こさないようにします。
ラインカメラの特徴
次に、ラインカメラとは、対象を「線」で撮像するカメラです。
対象物を移動させながら撮像し、線で撮像した画像をつなぎ合わせて1枚の画像を作りあげます。
コピー機やスキャナー機で、機械の光が前後左右に移動してスキャンする様子を想像してもらうと、イメージしやすいかと思います。
【図2.ラインカメラのイメージ】
ラインカメラは、円柱状やシート状の対象物の撮像に向いています。
円柱状の対象物をエリアカメラで撮像するには、対象物を囲むように複数台のカメラを用意する必要があり、また対象物を回転させながら撮像するということになれば、画像のつなぎ目や照明の当り方にムラが出来てしまうなど実際にエリアカメラで円柱状のものを撮像するのは現実的ではありません。
一方ラインカメラであれば、対象物を回転させながら撮像することで、1枚の画像に収めることができます。
さらに、長いシートのようにエリアカメラでは収まりきらない大きい対象物も、ラインカメラであれば撮像できます。
エリアカメラで課題となっていた照明ムラも、ラインスキャンカメラでは対処が容易です。
エリアカメラでは撮像したい面の全体に照明をあてる必要がありますが、ラインカメラでは撮像しようとしているライン上だけに照明を当てればよくなります。照明をあてる部分が狭くてすむので、照明の当て方も比較的難易度は下がり、照明を均一に当てやすくなります。
外観検査では、照明を均一に当てることが特に重要です。
なお、ラインカメラでは、対象物の移動速度を一定に保つ必要があります。これは、速度が変わってしまうと画像が伸びたり縮んだりしまうからです。
カメラの解像度
ここに2つのカメラがあります。
・500万画素のエリアカメラ
・4K画素のラインカメラ (4K画素とは4096画素です)
どちらの方が高精細なカメラでしょうか?
○解像度とは? ある大きさ当たりの画素数のことで、画素の密度を示す数値です。絶対解像度と相対解像度があり、絶対解像度は画像全体の画素総数を指しているのに対し、相対解像度は1インチ(2.54cm)あたりの画素数を指します。dpiやppiといった単位で表記されます。 資料やサイトによっては、解像度とだけ記載されているため、全体の画素数のことか画素の密度のことかどちらの意味で説明しているか意識する必要がありますね。 |
答えは「4K画素のラインカメラ」です。
一見、「500万画素のエリアカメラ」の方が高精細な印象を受けますが、実際には「4K画素のラインカメラ」の方が高精細なカメラとなります。
カメラの解像度を表す場合、エリアカメラは、「垂直(H) × 水平(V)」の面積の画素数で表すのに対して、ラインカメラはラインの画素数で表します。
【図3.エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラの解像度の違い】
図3のエリアカメラは500万画素ですが、垂直方向の画素数は2050画素です。ラインカメラは画素数が4096画素です。エリアカメラの約2倍の画素数です。これは、エリアカメラが対象物を「面」で捉えるのに対して、ラインカメラでは「線」で捉える仕組みによるものです。
ラインカメラの水平方向の画素数に関しては、製品により制限があるものの撮像する幅次第なので任意です。水平方向にエリアカメラと同程度撮像したとすると、面積の画素数でエリアカメラを上回ります。
また、ラインカメラでは、エリアカメラよりも高精細数な製品が用意されていることが多いようです。例えば、とても小さなキズを検査するために高精度な撮像を行いたい場合には、ラインカメラが適しています。
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